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1 保存量1 力学的エネルギー保存の法則

 物理を学んでいると、〇〇保存の法則とか、保存量とかという言葉が出てくることがあります。物理学で言う「保存」とは、量が増えたり減ったりせず、常に一定であるという意味です。そして「保存量」とは、増えたり減ったりせず、常に一定になる量の事です。保存量を考えると、全体での動きを考えることにつながります。個々の現象を見るときよりも、全体を見ることで、少し、大きな視点になります。(物理学は、あらゆることを少しの法則で理解しようとする営みなので、より大きな視点を持つことが、物理の目的であると言えるかもしれません。)

 ここでは、いくつかある保存量のうち、エネルギーという保存量を扱います。「エネルギーが保存しますよ」という法則が「エネルギー保存則」です。「エネルギー保存の法則」などとも呼ばれます。(これは法則です。「なぜ」を問うのは後回しにして、まずは、自然がそうなっているということを受け入れましょう。)

 さて、エネルギーという言葉も普段の生活で良く耳にする言葉ですが、物理学の中では難しい概念の1つです。目に見えませんし、手に取ることもできません。それゆえに、イメージがしにくいのかもしれません。しかし、増えたり減ったりせず量が一定であるという意味では、水やジュースと同じです。例えば、500ml入りのジュースを買って、いくらか飲んだとします。ジュースを飲むと、コップの中のジュースはなくなりますが、おなかの中のジュースの量まで考えれば、ジュースの量は増えも減りもしていません。ぜひ、この単元では、ジュースを思い浮かべながら学んでいって下さい。

 ジュースの例を用いて、少しだけ保存量の便利さを考えてみましょう。先ほどの例のように、500ml入りのジュースを買って、いくらか飲んだとします。残りが200mlであったとき、飲んだ量はいくらでしょうか?答えはすぐに300mlだと分かります。答えは一瞬で出てきますが、頭の中では、保存量の考え方を使っているはずです。最初の量も最後の量も500mlと一定、保存していることから、残っている量200mlを用いて、飲んだ量を500-200=300mlと求めたはずです。「全体では500mlと変わらない」という、「ジュース量保存則」を使ったと考えることができます。このように考えると、前後で変わらない量(ここではジュースの量が変わらない量)を考えることが、とても便利なことだと実感できるのではないでしょうか。

 エネルギーとジュースは全く違うものですが、エネルギーを学ぶ上では、この類似点を意識し、水やジュースを思い描きながら学んでいきましょう。