1.8.1 物体が1つのとき(問題演習)
問1
図のように、天井からつるされた5Nのおもりが下の方に3Nの力で引っ張られた状態で静止している。おもりの上側の糸の張力はいくらか?
解説
これは何となく考えただけでも8Nと答えが出ると思います。しかし、ここでは式をどのように立てるべきかを考えてみましょう。
力学の問題では必ず、着目する物体を決め、その物体にはたらく力を正しく見つけ、正しく図示することから始まります。そして、座標軸を定め、式を立てるのです。どんな難しい問題もこの流れは変わりません。
この問題も、そのプロセスを練習しましょう。
①着目する物体を決める
まず、着目する物体を決めます。今回の問題では、おもりが静止しているとあるので、おもりにはたらく力のつりあいを考えます。着目する物体は「おもり」です。
②着目している物体にはたらく力を見つける
つづいて、この着目している物体「おもり」にはたらく力を見つけます。力を見つける際には、「遠隔力」と「接触力」に分けて、それぞれ探します。遠隔力は、離れてはたらく力で、今のところ、「重力」「静電気力」「磁力」のみだと考えましょう。この問題では「重力」だけを考えればOKです。続いて「接触力」は、触れている物体があれば必ず力がはたらいていると思いましょう。(たまに触れているだけで力がはたらかないこともありますが、それは例外だと思いましょう。)この問題では、物体には上側に1本、下側に1本の糸がありますので、その2カ所で力を受けています。
③力を図示し、座標軸を定めて、それぞれの力の成分を求める
図示すると次のようになります。そして、この図を見ながら、座標軸を定め、成分を求めます。今回は、全ての力が一直線上にあるので、(上下のどちらの向きを正の向きとしてもかまいませんが)上向きを正とする1本の数直線の上に全てベクトルを表すことができます。すると、重力が下向きに-5N、張力が下向きに-3Nと表すことができます(下向きなので符号がマイナスとなっている点に注意)。
④式を立てる
③の成分を見ながら、未知数である張力S(>0)を用いて式を立てると次のようになります。
(+S)+(-5)+(-3)=0
⑤式を解く
上の簡単な式を解くとS=+8、つまり上向きに8Nであるとわかるのです。
座標軸っていつも必要?
今回の問題は、座標軸を定めても、定めなくても簡単に解けたかもしれませんが、
今後物理を学んでいくと、座標軸を定めて考えないと、頭の中がこんがらがってしまうような問題とたくさん出会います。一方で、座標軸を定めたがゆえに解けなくなる問題はありません。ですので、常に座標軸を定めて考えることをお薦めします。この解説でも常に座標軸を定めて解く方法を紹介していこうと思いますので、ぜひ使い慣れて、便利さを実感していただきたいです。
力と力のつりあいについて 目次
3.ベクトルである力を、どう定義し、測り、式に表し、図示すべきか?
6.1.合力の求め方① 図形を用いた方法(平行四辺形の法則)
7.力のつりあい
7.1.力のつりあいとは?
7.2.力のつりあいの式とは?
8.1.物体が1つのとき(問題演習) (⇐今ここ!)