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2 力積と運動量の関係は?

 力積と運動量の関係は次の通りです。これは、この単元を理解するためにとても重要なので、覚えてください。まずはこれを導出してみましょう。

 「物体の運動量の変化は、物体が受けた力積に等しい。」

 

 

2.1      力積と運動量の関係を運動方程式から導いてみる

 ここでは、一直線上を運動している物体が一定の力$\overrightarrow{F}$を秒間受け、速度が$\overrightarrow{v}$から$\overrightarrow{v'}$になったという状況を考えてみます。この場合、次のように簡単に示すことができます。

 スタートは運動方程式です。力学は皆、運動方程式から始めることができます。

$$m\overrightarrow{a}=\overrightarrow{F}$$

 力積と運動量の関係を導きたいので、式変形をして右辺を力積$\overrightarrow{F}\Delta t$にすることを考えます。両辺に$\Delta t$を掛けてあげれば良いですね。すると次の式を得ます。

$$m\overrightarrow{a} \Delta t=\overrightarrow{F} \Delta t$$

 ここで、加速度$\overrightarrow{a}$の定義を思い出しましょう。加速度$\overrightarrow{a}$の定義は「単位時間当たりの速度の変化」です。それゆえ、定義式は次のように表せました。

$$\overrightarrow{a} = \frac{\overrightarrow{v'}-\overrightarrow{v}}{\Delta t}$$

これを上の式の$\overrightarrow{a} $に代入してみましょう。すると、次の式が得られます。

$$ m\frac{\overrightarrow{v'}-\overrightarrow{v}}{\Delta t}=\overrightarrow{F} \Delta t$$

よって

$$m(\overrightarrow{v'}-\overrightarrow{v})=\overrightarrow{F} \Delta t$$

$$m\overrightarrow{v'}-m\overrightarrow{v})=\overrightarrow{F} \Delta t$$

 この式をよく見ると、左辺は(後の運動量)-(前の運動量)、すなわち運動量の変化、そして右辺が力積であることが分かります。以上より、「物体の運動量の変化は、物体が受けた力積に等しい」が言えるのです。

 

 

2.2 「物体の運動量の変化は、物体が受けた力積に等しい」とはどういうこと?

 この関係を具体的な例を用いて考えてみましょう。例えば、テニスボールをラケットで図のように打ったとしましょう。ボールの質量と速さで計算した運動量が右図の赤と青だとしたら、その変化は緑で表されます。このとき、この緑がラケットがボールに与えた力積であるということです。

「物体の運動量の変化は、物体が受けた力積に等しい」

 これを、矢印を用いて式のように表すと次のようになります。

 ⇒  の運動量の運動量力積 

 ⇒ 

 

 

 左辺がベクトルの引き算なので、どのように計算すべきか悩むかもしれません。しかし、ベクトルのマイナス1倍は向きを反対にするだけ、ということを利用すると、次のように計算できます。

 1-3=1+(-3)と同様、マイナスを括弧の中に入れると、

  ⇒  

  

 ベクトルのマイナス1倍なので、向きを反対にすると、

  ⇒  

 

 ここまでくれば、普通のベクトルの合成ですので、

  ⇒   

 

 確かに、左辺を計算すると、右辺の力積になることが納得できると思います。

 

 

 ベクトルの引き算に慣れてきたら、次のように、引くベクトルの先端から引かれるベクトルの先端へのベクトルが引き算の答えになると考えましょう。

 これは、スカラーの引き算を考えたときに、数直線上において、引く数から引かれる数までの変化が求める引き算の答えになることと似ています。例えば、4-1は引く数「1」から引かれる数「4」までの変化「+3」になるということです。ベクトルでもスカラーでも引き算は、引くものから引かれるものへの変化なのです。

(ベクトルの引き算については、他にも応用例があるので、後ほど練習しましょう)