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2.3 等加速度直線運動と大切な3つの公式

 さて、ここまで理解したら、「等加速度直線運動」について考えてみます。「等加速度直線運動」とはしい加速度で一直線上を動く運動のことです。

 

 この単元で3つの公式が重要になってくるので、まずはその公式たちを、例題を通して導出しましょう。

 

例)

 下図のように、加速度aで等加速度直線運動をしている物体がある。この物体は時刻0秒において速さがv0である。

問1 時刻t〔秒〕における速さvを求めよ

問2 時刻0秒から時刻t〔秒〕における変位xを求めよ

問3 速さがvになるまでに移動した距離xを求めよ

(※問1と問3で同じ文字vを使っていて、気持ち悪いですが、結果を公式としてまとめたい都合上、気持ち悪さには目をつぶってください。気持ち悪くない人はこのコメントは無視してください。)

 

解答:

 問題の設定をグラフ化したのが右図です。加速度が一定なので、速さの変化が一定になるように、v-tグラフを直線で描いています。

v-tグラフでは、タテ軸は速さ、ヨコ軸は時間なので面積は速さ×時間=変位、傾きは速さの変化÷時間=加速度となる。

グラフの面積はタテ×ヨコ

グラフの傾きはタテ÷ヨコ

 

問1の答え

時刻0秒でv0t秒間加速度aで速度が変化しているので、

$v=v_0+at$ ・・・(i)

 

問2の答え

時刻0秒から時刻t秒までの変位は、x=0とx=tの間で、グラフとx軸に囲まれている灰色部分の面積を求めればよい。

よって、台形の面積を求める公式を用いて

$x=(v_0+(v_0+at))\times t \times \frac{1}{2}$ よって

$x=v_0 t + \frac{1}{2} at^2$  ・・・(ii)

 

問3の答え

この問題は2段階で考えてみましょう。

まず、速さがvになるまでの時間t1

$v=v_0+at_1$ よって

$t_1 = (v-v_0)/a$

 

次に$t_1$\秒までに移動する距離xを求めて

$x=(v_0+(v_0+at_1)) \times t \times \frac{1}{2} = v_0 t_1 + \frac{1}{2} a t_1^2$

t1に上の値を代入して整理すると、

$x=v_0 \frac{(v-v_0)}{a}+\frac{1}{2} a {\frac{v-v_0}{a}}^2$

両辺に2aをかけて

$2ax=2v_0(v-v_0)+(v-v_0)^2$

整理すると

v^2-v_0^2=2ax ・・・(iii)

 

 ここまでで、例題の答えが出そろいました。しかし、大切なのはここからです。

実は、今求めた式(i), (ii), (iii)は、加速度aや初速度v0、時刻tがどのような値であっても変わりません。そのため、どのような状況においても使うことができます。その便利さは、この後、別の例題を通して実感してみてください。

なお、このように覚えておくと便利に使える式を公式と呼びます。

 

等加速度直線運動の3つの公式

(i)  $v=v_0+at$(速度 と時間 の関係式)

(ii) $x=v_0 t + \frac{1}{2} at^2$(位置 と時間 の関係式)

(iii) $v^2-v_0^2=2ax$(位置 と速度 の関係式)

 

例題)

下図のように、加速度1〔m/s2〕で等加速度直線運動をしている物体がある。この物体は時刻0秒において速さが1〔m/s〕である。

問1 時刻3〔秒〕における速さvを求めよ

問2 時刻0〔秒〕から時刻3〔秒〕における変位を求めよ

問3 速さが3になるまでに移動した距離を求めよ

 加速度aが1〔m/s2〕、初速度v0が1〔m/s〕、時刻3秒として、また問3においては速度3m/sになるまでの時間を考えるならば、次のようなグラフを用いて上のように考え、問1から問3の答えを4m/s、15/2 m、4.5mと得ることができます。

 

 先に求めた3つの公式は、どのような値を入れてもよかったので、加速度aに1、初速度v0に1、tに3、問3のvに3を入れてみると、それぞれ次のように求まります。

問1

公式(i)$v=v_0+at$ にそれぞれ代入すると、v=4

問2

公式(ii)$x=v_0 t + \frac{1}{2} at^2$ にそれぞれ代入すると、x=3+4.5=7.5

問3

公式(iii)$v^2-v_0^2=2ax$ にそれぞれ代入すると、x=4.5

 

※もちろん公式を用いなくても、グラフを見ながら考えることで同じ答えを得ることができます。

 

 具体的な数字を入れた計算をすると、他の問題には使えませんが、先ほど公式を求めたときのように、文字で計算すると、どのような値を入れても成り立つ式を作ることができます。

 文字を入れて計算すると、どの数字の場合であっても、一般的に成り立つ式ができます。一般的に成り立つようにすることを「一般化する」などと言いますので、公式は一般化された式ということができます。

 なお、公式は上のように、グラフを描いて導くことができますので、忘れるたびにグラフから導いてみてください。そのうち、正確に覚えられるようになります。

 

何のために単位の確認をするの?

 以前、等式では必ず単位も確認せよ。と出てきました。両辺の単位を比べると、間違いがあったときに気が付くことができますので、とても便利です。ここでそのやり方を見てみましょう。

 例えば、位置 と時間 の関係式($x=v_0 t + \frac{1}{2} at^2$)を用いて考えてみます。

 左辺はxなので単位は〔m〕です。

 一方、右辺は1/2at2なので〔m/s2〕×〔s〕×〔s〕=〔m〕です。

 (1/2はただの数なので単位はありません)

 このように、等式に間違いがない場合には、左辺と右辺の単位は一致することが確認できます。

 さて、ここで、例えば右辺の第一項を誤って$v_0 t^2$と記憶していたとしましょう。

 その場合、この$v_0 t^2$の単位を確認すると、〔m/s〕×〔s〕×〔s〕=〔ms〕となり、左辺と一致しません。$v_0 t^2$が誤りであることが分かるのです。このように単位を調べることは、間違いに気づくという点でも有用です。ぜひ、常に単位を気にするようにしましょう。

 

微分積分って便利なの?その2

 これは微分積分の計算方法を知っている人向けの補足です。

 先ほどの「微分積分って便利なの?」で述べたグラフ同士の関係は、微分積分という言葉を用いると次のように表すことができます。

a-tグラフの面積を求めると速度が分かる ⇒ 加速度を積分すると速度が分かる。

v-tグラフの面積を求めると変位が分かる ⇒ 速度を積分すると変位が分かる。

x-tグラフの傾きを求めると速度が分かる ⇒ 変位を微分すると速度が分かる。

v-tグラフの傾きを求めると加速度が分かる ⇒ 速度を積分すると加速度が分かる。

 

 さらに、グラフの関係を意識しながら3つの公式を眺めると、次のように変位、速度、加速度が微分積分によって結びついていることが分かります。ここまでくると、式やグラフの関係というよりは、より本質的に、変位、速度、加速度という量が互いに微分積分という関係によって結びついていることが実感として持てるようになってくるのではないでしょうか?なお、その関係は、速度や加速度という言葉の定義そのものに関係していますので、改めて、速度や加速度の定義を眺めてみてください。

 

式を用いて解くのとグラフを用いて解くのと、どちらが本質的なのか?

 式を用いる方が“本質的”?グラフを用いるのはただのテクニック?といった質問を何度か聞かれたことがあります。式の方を重視するような姿勢がうかがえました。しかし、式から答えを導く方が大切かというと、そんなことは全くありません。

 理科では現象を説明できること、もしくはその説明のための法則を理解することが大切です。現象を式で表すことや、グラフで表すことは、その現象を人間が理解しやすいようにしたものに過ぎません。つまりどちらも表現の一つです。そして、式で表す方が得意な人もいれば、グラフで表す方が得意な人もいると思います。サイエンスを専門とする科学者でも、やはり好みは分かれるのではないかと思います。ぜひ、理解しやすい方で理解してください。そして、どちらの表現も行き来できるのが望ましいです。ぜひ理解しやすい方から理解してみてください。

 高校物理の問題では、式でないと解けないという問題はないと思いますので、個人的にはv-tグラフの方がおすすめです。直感的に分かるので、理解しやすい人が多いと思います。