3.3.1 物体が1つの場合
例題)1物体のとき
質量10kgの物体に糸をつけてぶら下げ,鉛直方向に上げ下げする。重力加速度の大きさを9.8m/s2とする。
(1) 糸の張力Tが148Nのとき,物体の加速度a〔m/s2〕の大きさと向きを求めよ。
(2) 物体が一定の速さ4.0m/sで上昇しているときの糸の張力の大きさT〔N〕を求めよ。
解答:
この問題は、何となく考えただけでも5m/s2と答えが出ると思います。しかし、ここでは式をどのように立てるべきかを考えてみましょう。
力学の問題では必ず、着目する物体を決め、その物体にはたらく力を正しく見つけ、正しく図示することから始まります。そして、座標軸を定め、式を立てるのです。力のつりあいのときに練習した流れです。どんな難しい問題もこの流れは変わりません。
この問題も、そのプロセスを練習しましょう。
①着目する物体を決める
まず、着目する物体を決めます。今回の問題では“質量10kgの物体”の動きを考えているので、この物体に着目します。
②着目している物体にはたらく力を見つける
つづいて、この着目している物体にはたらく力を見つけます。くどいですが、力を見つける際には、「遠隔力」と「接触力」に分けて、それぞれ探します。遠隔力は、離れてはたらく力で、今のところ、「重力」「静電気力」「磁力」のみだと考えましょう。この問題では「重力」だけを考えればOKです。続いて「接触力」は、触れている物体があれば必ず力がはたらいていると思いましょう。(たまに触れているだけで力がはたらかないこともありますが、それは例外だと思いましょう。)この問題では、物体には上側に1本、糸がありますので、この1カ所のみで力を受けています。
③力を図示し、座標軸を定めて、それぞれの力の成分を求める
図示すると次のようになります。そして、この図を見ながら、座標軸を定め、成分を求めます。今回は、全ての力が一直線上にあるので、(上下のどちらの向きを正の向きとしてもかまいませんが)上向きを正とする1本の数直線の上に全てベクトルを表すことができます。すると、重力が下向きに-98N、張力が上向きに148Nと表すことができます(重力は下向きなので符号がマイナスとなっている点に注意)。
④式を立てる
③の成分を見ながら、式を立てます。運動方程式の問題では、力の他に加速度も考える必要があります。ここでは、(未知数である)加速度を上向きにa〔m/s2〕として運動方程式($ma=F$の形)を立てましょう。
次の式が求まります。
$10\times a =(-98)+(+148)$
⑤式を解く
式を解きます。上の簡単な式を解くとa=+5、つまり上向きに5m/s2であるとわかるのです。
運動の法則 目次
3.1.物体が1つの場合(⇐今ここ!)
3.2.物体が複数の場合
4.運動の法則は、身のまわりの現象をどの程度、説明しうるか?
4.1.重いものと軽いものの落下
4.2.真空中での羽の運動、空気中での羽の運動
4.3.空気抵抗を受ける物体の運動(雨粒)
4.4.自転車の速さについての考察