2.気体の状態方程式
このページでは、経験則として、実験的に得られた"理想気体の運動方程式"という式を紹介します。実験的に得られたものなので、法則というべきものです。
また、今後の準備も含め、復習や用語の定義も行います。
1. 復習
■圧力$P$〔N/ m2〕
圧力とは単位面積(1m2)当たりの力の大きさのこと。この定義より、圧力は次の式で求められることがわかる。なお、気体によって生じる圧力のことを気圧という。
(これは人が決めた定義です)
$$圧力P〔N/m^2〕= \frac{力の大きさN〔N〕}{面積S〔m^2〕}$$
■仕事$W$〔J〕
仕事$W$〔J〕は、力の大きさを$F$〔N〕、移動距離を$x$〔m〕として$W=Fx$で表される量のこと。
(これは人が決めた定義です)
※力を加えて動かすと、物体を加速することなどができます。このとき、加速するのはエネルギーを渡しているからです。このように、押す力や引く力によってエネルギーをやり取りするとき、その、やり取りしたエネルギーの量が仕事の量です。
※詳しくはこちら↓
2. 経験的、実験的に得られた法則
■ボイルの法則(1662年)
温度が一定のとき、一定量の気体の圧力$p$〔Pa〕は気体の体積$V$〔m3〕に反比例する。これは経験則、実験的に得られた法則です。
$$pV=一定$$
p〔Pa〕:圧力(pressure) V〔m3〕:体積(volume) |
■シャルルの法則(1787年)
圧力が一定のとき、一定量の気体の体積$V$〔m3〕は絶対温度$T$〔K〕に比例します。これは経験則、実験的に得られた法則です。
$$\frac{V}{T}=一定$$
V〔m3〕:体積(volume) T〔K〕:絶対温度(absolute temperature) V0〔m3〕:0℃での体積,T0〔K〕:273K |
■ボイル・シャルルの法則
ボイルの法則とシャルルの法則を1つにまとめると、圧力$p$〔Pa〕、温度$T$〔K〕、体積$V$〔m3〕の関係が次のように得られます。これをボイル・シャルルの法則といいます。これも実験的な法則です。
$$\frac{pV}{T}=一定$$
3. 経験的、実験的に得られた法則 理想気体の状態方程式
理想気体の状態方程式とは(一般的な)気体の圧力 $p$、体積$V$ 、温度$T$ 、物質量(~分子の数)$n$の関係を表す式のことです。比例定数を$R$として次式で与えられ、$R=8.31$〔Pa m3/mol K〕です。この$R$を気体定数といいます。
$$pV=nRT$$
■物質量$n$ 〔mol〕
上式に出てきた「物質量」は気体を構成する粒子の個数に着目した物質の量です。単位にmol(モル)を用い、原子や分子・イオンなどの粒子が$6.02×10^{23}$個集まった集団を1 molといいます。また、1 molあたりの粒子数をアボガドロ定数$NA=6.02×10^{23}$/molといいます。
※これは12個の集まりを「ダース」と呼ぶのと同じようなものである。
※ボイル・シャルルの法則で考えた気体の体積$V$は、明らかに気体の物質量$n$〔mol〕に比例します。これより比例定数を$R$とすると次式が得られ、ここから前述の理想気体の状態方程式が得られます。つまり、これも経験則、実験的に得られた法則です。
$$\frac{pV}{Tn}=一定$$
※なお、理想気体の状態方程式はボイルの法則、シャルルの法則、ボイル・シャルルの法則をまとめたようなものなので、これらの法則はすべて理想気体の状態方程式から理解することができる。個々の法則を覚える必要はない。
例えば、理想気体の状態方程式$$pV=nRT$$において、物質量$n$、温度$T$が一定とすると、$$pV=一定$$を示すことができる。これがボイルの法則である。
4. 用語
理想気体:圧力$p$、体積$V$、温度$T$、物質量$n$の関係が、厳密に理想気体の状態方程式と一致する理想的な気体のことをいう。具体的には、気体分子の体積がゼロ、気体分子同士の分子間力がないなどとしている。
標準状態:273K(=0℃)、1.013×105Pa(=1気圧)の状態のことである。標準状態では理想気体の物質量1モルあたりの体積$V$は、2.24×10-2m3/molになる。
状態変化:圧力$p$や体積$V$、温度$T$を変えることで、気体の状態が
変化することを状態変化という。
定積変化:体積$V$(と物質量$n$)を一体に保った状態変化のこと。
このとき、理想気体の状態方程式を考えると、$p$∝$T$となる。
定圧変化:圧力$p$(と物質量$n$)を一体に保った状態変化のこと。
このとき、理想気体の状態方程式を考えると、$V$∝$T$となる。
これはシャルルの法則に他ならない。
等温変化:温度$T$(と物質量$n$)を一体に保った状態変化のこと。
このとき、理想気体の状態方程式を考えると、$pV=$一定となる。
これはボイルの法則に他ならない。
さて、ここまで、復習と新しい法則の紹介をしました。準備は大体整いましたので、熱機関のエネルギー効率を考えていきましょう。
次のページからは、具体的な熱機関を一つ考えていきます。
熱力学 目次
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