【独習】ゼロから 一歩ずつ 物理の見方・考え方 Home

1, 熱機関、熱効率とは?

 熱機関とは、熱を仕事に変換する装置のことです。例えば1705年のニューコメンという人が作った蒸気機関(下図)のように、水を熱して膨張させ(左図)、次に冷やして(中図)収縮させる(右図)とモノを持ち上げるといった仕事をさせることができます。

 熱効率とは、熱機関がどれだけの燃料を用いてどのくらいの仕事をすることができるのかという効率に関する指標であり、熱機関が吸収した熱量$Q_{in}$ (もしくは使った燃料がもつ熱エネルギーの量)と熱機関がした(正味の)仕事$W$ によって次のように定義することができます(なお、第二項から第三項への変換は、下図右に示したエネルギー保存則による)。

$$熱効率e=\frac{W}{Q_{in}}(=\frac{Q_{in}-Q_{out}}{Q_{in}})$$

 

図 ニューコメンの蒸気機関 株式会社アイ・アール・エス 第1回 エンジンの誕生 ~ニューコメンの蒸気機関~ 

図 サンキーダイアグラム 
熱機関に与えた熱量Q_inの一部が仕事W_outとして使われ、一部が熱Q_outとして捨てられる



 1700年代に用いられたニューコメンの熱機関の熱効率は0.5%程度と言われており、一方で現代のガソリンエンジンの自動車の熱効率は30~40%と言われています。

 熱力学の歴史は、熱機関の熱効率を高めるための努力であり、そのための気体の性質の研究です。

 本単元では、熱機関の熱効率を求めることを主な目的の1つとしています。そのため、本テキストの構成も熱効率を求めることを目的とし、個々の内容を網羅する形としています。