【独習】ゼロから 一歩ずつ 物理の見方・考え方 Home

1.7 力のつりあい

 ここでは、今まで学んできた力の性質を応用し、静止している物体にはたらく力の様子について考えてみます。

 

1.1.1      力のつりあいとは?

 運動会で行う綱引きをイメージしていただければよいと思いますが、両チームが同じ力で引き合っているとき、綱はどちらにも動きません。静止しています。物理では、このように同じ力で引き合っているときに、「力がつりあっている」と表現します。

 例えば、何度も出てきている下の図を例に説明すると、左図「$\overrightarrow{F_1}$という力と$\overrightarrow{F_{重力}}$という力はつりあっている」と言えますし、右図では「$\overrightarrow{F_{合力}}$という力と$\overrightarrow{F_{重力}}$という力はつりあっている」、もしくは「$\overrightarrow{F_{1}}$と$\overrightarrow{F_{2}}$の合力は$\overrightarrow{F_{重力}}$とつりあっている」などということができます($\overrightarrow{F_{1}}$と$\overrightarrow{F_{2}}$の合力が$\overrightarrow{F_{合力}}$なので)。

静止している場合には、力がつりあっている。これをもう少し深めていきましょう。

 

1.1.2      力のつりあいの式とは?

力がつりあっているという状況を式で表そうとすると、どのように表せばよいでしょうか?手掛かりとして、またまた上の右図の状況を考えましょう。 $\overrightarrow{F_{合力}}$と$\overrightarrow{F_{重力}}$という、つりあっている二つの力を合わせるとどうなるでしょうか?答えは「ゼロ」になります。

実は、この状況からもわかるように、「力がつりあっている」状態とは、すべての力を合わせた(合成した)ときに、「ゼロ」になっている状態の事なのです。

上の例を式で表すと次のようになります。

「$\overrightarrow{F_{合力}}$という力と$\overrightarrow{F_{重力}}$という力はつりあっている」 ⇒ $\overrightarrow{F_{重力}}+\overrightarrow{F_{重力}}=\overrightarrow{0}$

「$\overrightarrow{F_{1}}$と$\overrightarrow{F_{2}}$の合力は$\overrightarrow{F_{重力}}$とつりあっている」 ⇒ $\overrightarrow{F_{1}}+\overrightarrow{F_{2}}+\overrightarrow{F_{重力}}=\overrightarrow{0}$

 

上の例から離れて、一般的な話にすると、こうなります。

物体が静止しているとき、物体にはたらく力はつりあっている。

物体にはたらく力を$\overrightarrow{F_{1}}$、$\overrightarrow{F_{2}}$ 、$\overrightarrow{F_{3}}$・・・とし、式に表すと次のようになります。

 

力のつりあいの式:

 $\overrightarrow{F_{1}}+\overrightarrow{F_{2}}+\overrightarrow{F_{3}}+・・・=\overrightarrow{0}$

 

この式を「つりあいの式」と呼びます。

この式は、物体にはたらくすべての力の合力をもとめるとゼロになるということを表しています。物体が動かないのは、そもそも力がはたらいていないときか、もしくははたらいていても合力がゼロになっているときであるということになります。直観ともあっていて、理解しやすいのではないでしょうか?

ここからは、これを応用して、問題を解決していきたいと思います。

 

理科の議論の流れ・思考の流れ

理科の議論は、「様々な現象」から始まり、結局どういうことかという「原理」を突き止めるという議論と、その「原理」をもとに、その原理を応用して「様々な問題を解決する」「様々な現象を説明する」という議論の2通りあります。ここまでは荷物を持っている状況という具体的な現象から、「つりあいの式」という一般的な状況を導いてきましたので、前者の議論です。一方、ここからはつりあいの式を応用して問題を解決するという後者の議論に入っていきます。議論の大きな流れが意識できると分かりやすいと思うので、意識してみてください。

難しい言葉では前者を「帰納的」な議論、後者を「演繹的」な議論といいます。この言葉を使いこなしているとカッコいいと思うので、気になった人は調べてみてください。