1.電荷と電場-1 電荷とは?
はじめに
ポイント1 電荷の担い手は荷電粒子(電子or陽子)
ポイント2 場とは何か?
1.1 静電気力とは
髪の毛に下敷きを擦りつけ、髪の毛を逆立てて遊んだ経験があると思う。髪の毛が逆立つということは、力学的に考えると、何らかの力が上向きに作用しているということが分かる。この、髪の毛と下敷きが互いに引き付け合う力が静電気力の一例である。
また、静電気力には引力ではなく、互いに退け合う斥力もある。
ティッシュペーパーでアクリル棒や塩化ビニル棒を摩擦し、静電気力を観察すると、これは次のようになる。
① 電気には正負の2種類があり,同種の電気は斥しりぞけ合い,異種の電気は引き合う。
② 2種類の物体をこすり合わせると,一方は正に,他方は負に帯電する。
他の材質で行った実験などから考えると、2種類の電荷をプラス、マイナス、斥力と引力をプラスとマイナスと定義すると挙動をうまく説明することができる。
斥力:(+1)×(+1)=(+1)、 (-1)×(-1)=(+1)
引力:(+1)×(-1)=(-1)
1.2 電子の動きによって静電気力を理解しよう
様々な実験から、静電気力を生じる“もと”となるものはあらゆる物質に含まれていることが分かる。(また、「原子」の単元でさらに詳細に見るが、それらあらゆる物質の中に同一ものが入っていることが分かる。)
それらの静電気力を生じる“もと”のことを電子と呼ぶようになった。電磁気学的な力はほぼすべて電子や原子核がもつ電荷にはたらく力である。この単元はミクロで見ると電子や原子核がもつ電荷にはたらく力の学問である。
現在の理解は、物質は原子からできており、原子にはプラスの電荷を持つ原子核とマイナスの電荷を持つ電子が含まれており、通常はプラスとマイナスの電荷が同量あることで中性になっている。電子は非常に軽いこともあって、ときおり原子核との結びつきが切れ、移動することがある。原子を飛び出した電子、もしくは電子が取り除かれた原子核は 帯電する。
1.3 静電気
□電荷の担い手
図のようにアルミ棒,ストロー,割りばしを画鋲の上にゆっくりとのせ,
帯電させたアクリル板を近づける。物体は動くか?
【アルミ棒、ストロー、割りばし】
答え:いずれも物体は動く(キーワード:静電誘導、誘電分極)
世の中のすべてのものが粒でできているという考え方を原子論という。
「もしいま何か天変地異が起こって、科学知識がすべて失われることになり、たった一つの文章だけしか次世代の生物に伝えられないということになったら、最小の語数で最大の情報を含む記述は何であろうか。私の考えでは、それは原子仮説(よび方は好きずきだが)だと思う。すなわち、すべてのものは原子 - 近い距離では互いに引き合い、あまり近づくと互いに反発しつつ、永久に動き回る小さな粒子 - から出来ている、ということである。これに少し洞察と思考を加えれば、この一つの文の中に、自然界に関する膨大な量の情報が含まれていることに気づくであろう。」(リチャードファインマン)
例えばのちに出てくる次のような現象・法則はすべて原子論を考えることで説明が容易になる。⇒静電誘導、誘電分極、電流、キルヒホッフ第一法則、電気量保存の法則、電気素量、など
練習問題 【箔検電器】
はく検電器を用いて次のような操作(a)~(e)をしたとき,箔のようすはどのように変化するだろうか。この時の電荷の動きを図中に示しなさい。
Ⅰ 塩化ビニル管をティッシュペーパーでこすり,負に帯電させる。
(a) 負に帯電した塩化ビニル管を,はく検電器の金属板に近づける。
(b) 塩化ビニル管を近づけたまま保持して,金属板に手を触れる。
(c) 引き続き,金属板から手を離す。
(d) 塩化ビニル管を遠ざける。
(e) 続いて,金属板に手を触れる。
練習問題2 【箔検電器2】
図のように接地した広い金属板Cの上に箔検電器を置く。検電器の上部の金属円板AはスイッチSを経て接地できるようになっている。はじめ、検電器の箔Bと金属円板Aには電荷がなく、箔Bは綴じている。スイッチSは開いている。なお、Sを綴じることはAを手で触れることに相当する。
次の各操作をした後、Aの上面に現れる電荷は「正」、「負」、「0」のうちどれか。また、箔Bに現れる電荷は「正」、「負」、「0」のうちどれか。なお、発生する電荷の量には注目せず、その符号のみ注目せよ。
(操作1)十分遠くにおいてある負に帯電した棒をAの上に
近づける。
(操作2)帯電棒をAの上に近づけたまま、Sを閉じる
(操作3)帯電棒をAの上に近づけたまま、Sを開く
(操作4)帯電棒をAから十分遠ざける。
帯電列
電気量の表し方
・帯電した物体のもつ電気を電荷といい、電荷の量を電気量または単に電荷という。
・電子の数と陽子の数の差が大きくなれば電気量は大きくなるということ。
・電気量の単位にはC(クーロン)を用いる。
1Cは1Aの電流が1秒間に運ぶ電気量の大きさとして定義され、現在もこの定義が用いられている。(⇐どういうこと?不思議な定義です)
・のちに電子と陽子1個当たりの電気量の大きさeが測定され、これを電気素量と呼んでいる。 e=1.60×10-19C
電荷の担い手は電子および陽子に過ぎないので、正負の符号を含めた電気量の総和は変化しない。これを電気量保存の法則と呼ぶ。