【独習】ゼロから 一歩ずつ 物理の見方・考え方 Home

1.8.3 物体が2つのとき (2次元)(問題演習)

ここでは2つの物体を考えましょう。動きを考えたい物体が2つ以上あるときには、”相互作用”が顔を出します。物体が2つ以上あるときには、作用反作用の法則、忘れないようにしてください!

 

 図のように、水平面と30°の角をなす滑らかな斜面を持つ質量Mの台Aが水平面に乗っている。その台の上に質量mの球状の物体Bが乗っている。Bの側面は図のように鉛直な滑らかな壁に接している。このとき、次の問に答えよ。ただし、重力加速度の大きさをgとする。

①球が壁を押す力の大きさを求めよ

②台と床の間の静止摩擦力の大きさを求めよ



 

 物体が二つになると、一気に難易度が高まりますが、心配することはありません。力学はあくまでも、「ある物体の動きは、その物体にはたらく力によって決まる」と言っていますので、結局は一つ一つの物体に対して、今までやってきたことをするしかないのです。そのため、物体が二つ以上あるときには、めんどくさいようでも、着目する物体毎に図を改めて描き、それぞれの図を用いながら前述の手順①~⑤を行いましょう。

 

それでは始めます。

①着目する物体を決める

 まず、着目する物体を決めます。今回は物体が2つあるので、2つの物体に着目します。そして、めんどうでも、それぞれについて図を描きますます。

②着目している物体にはたらく力を見つける

 つづいて、この着目しているそれぞれの物体にはたらく力を見つけます。

 球Bには、遠隔力である重力と、球と接している壁と台Aから力を受けます。壁と台Aはどちらも面なので、垂直抗力と摩擦力をそれぞれ考える必要がありますが、壁も台Aの斜面も滑らかなので、それぞれとの間の摩擦力は無視します。

 球に働く重力を$\overrightarrow{W_1}$、壁からの垂直抗力を$\overrightarrow{N_1}$、台Aからの垂直抗力を$\overrightarrow{N_2}$と名付けましょう。(力が多いので右下に添え字をつけています)

 台Aには、遠隔力である重力と、台Aと接している床と球から力を受けます。床は面なので、垂直抗力と摩擦力をそれぞれ考える必要がありますが、台Aの斜面は滑らかなので、球との間の摩擦力は無視します。(床との摩擦力は無視できないので考えます)

 台Aに働く重力を$\overrightarrow{W}$、床からの垂直抗力を$\overrightarrow{N_3}$、床との間の摩擦力を$\overrightarrow{f}$、球Bからの力を$\overrightarrow{N_4}$、と名付けましょう。(力が多いので右下に添え字をつけています)

 図のようになります。

(図中では、力の大きさを $W_1$、$N_2$ 、$N_2$ 、$W_2$ 、$N_3$ 、$f$ 、$N_4$ で表しています)



③力を図示し、座標軸を定めて、それぞれの力の成分を求める

 座標軸を定め、②で見つけた力の成分をそれぞれ求めます。今回は、図のように座標軸を定めましょう。座標軸の向きに、力を分解すると、それぞれの力の成分が見えてきます。

 例えば小球が壁から受ける垂直抗力$\overrightarrow{N_1}$の$x$成分は、正の向きなので$(+N_1)$、摩擦力$\overrightarrow{f}$の$x$成分は、負の向きなので$(-f)$となります。他の力に関しても、下の図を見ながら成分を確認しましょう。



④式を立てる

 ③で求めた成分を用いて、物体毎に$x$軸方向、$y$軸方向のそれぞれでつりあいの式を立てます。

球Bの$x$方向:   $(+N_1)+(-\frac{1}{2}N_2)=0$・・・(i)

球Bの$y$方向:   $(+mg)+(+\frac{\sqrt{3}}{2}N_2)=0$・・・(ii)

 

台Aの$x$方向:  $(+N_4)+(-f)=0$・・・(iii)

台Aの$y$方向:  $(-mg)+(-\frac{\sqrt{3}}{2}N_4)+(+N_3)=0$・・・(iv)

 

⑤式を解く

 これら式(i)~(iv)を連立することで解きます。文字が多くなったので、式の数と、未知数の数を確認してみましょう。

 式の数は4つです(つまり未知数が4つまでなら解けそうです)。一方で未知数は$N_1 、N_2 、N_3 、N_4 、f $の5つです。(質量mMは問題文中に与えられていますので知っている値と思いましょう)

 これでは、連立方程式を解くことができません。

 

 ここで大切なことに気が付く必要があります。この問題は物体が二つあるということです。物体が二つある問題では、作用反作用の法則が顔を出します。この問題では、球が台Aからの垂直抗力$\overrightarrow{N_2}$と、台Aが球から受ける力$\overrightarrow{N_4}$は、お互いに押し合う力ですので、作用と反作用の関係にあると言えるのです。そのため、作用反作用の法則より、実は$\overrightarrow{N_2}$$\overrightarrow{N_4}$が同じ大きさになることが分かるのです。

 これより、未知数は4つであると考えることができるようになり、連立方程式を解けるようになります。

 

 連立方程式を解くと、それぞれ次のように求まります。

$N_1=\frac{1}{\sqrt{3} }mg、N_2= \frac{2}{\sqrt{3}}mg、N_3=mg+Mg 、N_4=\frac{2}{\sqrt{3}}mg 、f=\frac{2}{\sqrt{3}}mg$

 

 いかがでしょうか?物体が二つになったら、二つ図を書いてそれぞれ力について考える。そのように対応してください。くどいですが、「その物体の動きは、その物体にはたらく力によって決まる」からです。