【独習】ゼロから 一歩ずつ 物理の見方・考え方 Home

6.ポイントのまとめ

 熱力学、特に熱機関(熱サイクル)の問題では、たくさんの物理量が登場し、さらには物理量同士の関係式もたくさん登場する(ボイル、シャルル、状態方程式、熱力学第一法則、モル比熱など)。そのため、実際に問題を見てみても様々な問われ方をして、様々な解き方がある。

 しかし、整理して問題を眺めてみると、結局どの問題も似たようなことを聞かれていることが多い。

 それゆえ、どのような問題でも対応しやすいように、あらかじめ熱機関の情報を グラフと後述の表の形にまとめてしまうことが得策であることが多い。(慣れてしまえば情報をまとめる時間はさほどかからず、問題の答えはまとめた情報の中にあることが多い。逆にこのルーティーン化を行わないと、”解き方”の多様さゆえ、熱力学がつかみどころのないもののように感じられてしまうと思われる。)

 そこでここでは、まずは今まで学んできたことのポイントをまとめ、その後、熱機関(熱サイクル)の問題を解く際の手順をルーティーン化をしてみたい。

1. ポイント

□各状態の気圧$p$ 、体積$V$ 、温度$T$は$pV$グラフ上に表現することができる

理想気体の状態方程式より、各状態で$pV=nRT$は常に成り立つ

  問題文中に$n$、$R$、$T$が与えられていない場合には、$p$、$V$を用いて解答しよう。逆もまたしかり。

□主な状態変化は次の4種類

  ・定圧変化 圧力一定の変化

 ・定積変化 体積一定の変化 (つまり 仕事$W_{in}=0$ )

・等温変化 温度一定の変化 (つまり$\Delta U=0$)

 ・断熱変化 外との熱のやりとりがない変化 (つまり$Q_{in}=0$) 

□$pV$グラフの面積は気体がした仕事$W_{out}$を表す

(体積が増えるとき気体がした仕事は正、体積が減るとき気体がした仕事は負)($W_{out}=-W_{in}$)

□内部エネルギーの変化は熱のやり取りによるものと仕事のやり取りの2種類がある。

熱力学の第一法則:$\Delta U=Q_{in}-W_{out}$

□気体の内部エネルギー$U$は温度$T$に比例する

  理想気体 単原子分子:$U=\frac{3}{2}nRT$、 2原子分子:$U=\frac{5}{2}nRT$

  温度が変わらなければ、内部エネルギーの変化はゼロ

□単原子分子、2原子分子の場合には、定積モル比熱$c_v$、定圧モル比熱$c_p$がそれぞれ次のように表せる。

  理想気体 単原子分子:$c_v=\frac{3}{2}R$、$c_p=\frac{5}{2}R$ 

           2原子分子:$c_v=\frac{5}{2}R$、$c_p=\frac{7}{2}R$

    (上記以外の場合には$c_v$や$c_p$として問題中に与えられている場合あり)

□状態変化の際に気体が得た熱量はモル比熱から計算するか、熱力学第一法則から計算 することができる。

□熱機関は「どれだけの燃料を用いてどのくらいの仕事をすることができるのか」という効率に関する指標である。

$$熱効率e=\frac{W_{正味のout}}{Q_{in}}=\frac{Q_{in}-Q_{out}}{Q_{in}}$$

 

2.  各状態変化の特徴

 以上のことより、各変化の過程の特徴は次の表ようにまとめることができる。なお、問題を解くときには下の表の灰色部分のみをまとめておこう。また、これらの情報を問題に即した形でまとめるために、モル数、気体の種類(理想気体であるか?単原子分子であるか?2原子分子であるか?)をあらかじめ確認しておこう。

 

 

定積変化

定圧変化

等温変化

断熱変化

一定になるもの

P/T=一定

V/T=一定

PV=一定

として、

pVγ=一定

第一法則の関係

Win=0より

ΔUQ

p=一定より

ΔUQpΔV

温度一定より

ΔU=0

Q=0より

ΔUWin

した

仕事

Wout=0

pVグラフの面積より

WoutpΔV

WoutQ

ΔU=-Wout

得た熱量

定積モル比熱Cvを用いて

QnCvΔT (=ΔU)

定圧モル比熱Cpを用いて

QnCpΔT

 

QWout

 

Q=0

補足

単原子分子:Cv=3/2R

2原子分子:Cv=5/2R

 

単原子分子:Cp=5/2R

2原子分子:Cp=7/2R

 

 

ポアソンの法則( として、pVγ=一定)が成り立つ

 

 

 

 

 

 

【参考】断熱変化におけるポアソンの法則

 断熱変化においては、$\gamma=c_p/c_v$として、$pV^\gamma=一定$、もしくは$TV^{\gamma-1}=一定$という関係が成立する。$\gamma$は比熱比と呼ばれ、理想気体 単原子分子の場合には$\gamma=c_p/c_v=\frac{5/2}{3/2}=\frac{5}{3}~1.67$となる。

 等温変化では$pV=一定$という関係が成り立つのに対し、断熱変化では$pV^\gamma=一定$($\gamma >1$)が成り立つことから、断熱変化のときの$pV$グラフの傾きは等温変化のグラフよりも急になることが分かる。(下図参照)

図 pVグラフにおける断熱変化の様子 等温変化よりも傾きが急になる。