1.5 絶対に迷わない力の正しい見つけ方
力学とは、「ある物体」の動きを「その物体にはたらく力」によって明らかにしようとするものですので、「ある物体」にはたらく力を正しく見つけられなければ、その物体の運動を正しく示すことはできません。また、「ある物体」にはたらく力と「ある物体」以外の物体にはたらく力を混同してしまってもいけません。
そこで、ここでは、力を正しく、過不足なく見つけるための方法を紹介します。これは簡単な手順です。力に対する古いイメージを捨て去り、正しい手順で正確に力を見つけてください。この手順を無視して、「こんな力がある気がする」とすると、力学は絶対に理解できません。古いイメージは今すぐ捨てましょう。
まず、力は、物体に触れずにはたらく「遠隔力」と、物体に触れているときにのみはたらく「接触力」の2通りに分類できます(触れているか触れていないかの2通りなので当たり前の事しか言っていません)。
次に、触れずにはたらくことができる「遠隔力」は、高校物理では当面の間「重力」「磁力」「静電気力」しか出てきません。(電磁気学という分野を学ぶと別のが出てきますがそれまではこれだけでOKです)
力の分類
・接していなくてもはたらく遠隔力(当面は重力、磁力、静電気力のみ)
・接しているときに必ずはたらく接触力
そのため、力を見つけるときには、次のようにします。
力の見つけ方
- まずは①遠隔力(当面は重力、磁力、静電気力のみ)を見つけ、
- 次に②接触力(物体に触れているものから受ける力)を見つける。
- ただし、面と接しているときには、面から受ける力を(面と垂直な)垂直抗力と、
(面と平行な)摩擦力に分けて考える
このように考えておけば、得体のしれない力を誤って考えてしまったり、あるはずの力を見落としてしまったりすることは無いはずです。問題によっては物体同士が触れているだけで、力がはたらいていない場合や、摩擦がないという場合もありますが、それらは例外ととらえましょう。
次の例を考えてみましょう。このボールにはたらく力を描くとどのようになるでしょうか?
ボールが飛ぶ方向に力がはたらいていると考えてしまいませんでしたか?
前述の①、②を正しく用いて考えます。まず、①遠隔力は重力のみです。そして、ボールに接している物体が何もないことから、②接触力は何もない、つまり、重力の他に力ははたらいていないと理解することができます。
もし、ボールが飛んでいく方向(横方向)に力を考えてしまった人がいたら、それは古いイメージに縛られている証拠です。先の力の見つけ方を再確認し、正しく力を見つけられるようにして下さい。
力と力のつりあいについて 目次
3.ベクトルである力を、どう定義し、測り、式に表し、図示すべきか?
5.絶対に迷わない力の正しい見つけ方(⇐今ここ!)
6.1.合力の求め方① 図形を用いた方法(平行四辺形の法則)
7.力のつりあい
7.1.力のつりあいとは?
7.2.力のつりあいの式とは?
8.1.物体が1つのとき(問題演習)