回転運動の表し方
ニュートンの運動の法則が実は並進運動しか表せていなかったことは分かった。そして回転運動を考慮に入れることで硬い物体の運動を完璧に記述できることが分かった。でもまた新しいことが増えて大変そう。そう思ったかもしれませんが、回転の方程式はニュートン方程式と非常に似ています。ここでは回転の方程式について少しだけ理解を深めた後に、本単元で学ぶ内容を明確にします。
1.1.1 運動方程式と回転の方程式の類似点
回転の方程式は高校の物理の範囲の外なので、深入りする必要はありませんが、少しだけ紹介してみます。というのは、運動方程式と回転の方程式はとっても似ている点があるからです。実は、回転の方程式は“運動方程式の座標軸をぐるっと丸めたようなもの”なのです。
運動方程式(並進運動)
運動方程式はma=Fです。ただし、それぞれの変数は次の通りです。
m:質量、加速(速度変化)のしにくさ
F:力、運動の速度を変えるはたらきがあるもの
a:加速度、単位時間当たりの速度の変化
つまり、1秒当たりの物体の速さの変化(加速度)は運動の速度を変化させるもの(力)の大きさに比例し、加速のしにくさ(質量)に反比例する ということです。
回転の方程式(回転運動)
回転の方程式は、回転速度の変化のしにくさである慣性モーメントIという量や、回転の様子を変えるはたらきであるモーメントMという量、回転加速度aを用いて、Ia=Mと表せます。
I:慣性モーメント、回転速度の変化のしにくさ
M:モーメント、回転の様子を変えるはたらきがあるもの
α:回転加速度、単位時間当たりの回転速度の変化
つまり、1秒当たりの物体の回転速度の変化(回転加速度)は回転の様子を変化させるもの(モーメント)の大きさに比例し、回転加速の変化のしにくさ(慣性モーメント)に反比例するということです。
それぞれの対応を考えると、質量mと慣性モーメントIはそれぞれ加速のしにくさと回転速度の変化のしにくさを表す似たもの同士ですし、力FとモーメントMはそれぞれ物体を加速させるはたらきや物体を回転させるはたらきという似たもの同士です。これらによって加速度や回転加速度が決まるという点でも似ています。
違いは、運動方程式がある方向への(並進)運動を表すのに対し、回転の方程式は(ある向きから見たときに)時計回りか反時計回りのどちらかへの回転のみを表すという点です。
このように考えると、回転の方程式は“運動方程式の座標軸をぐるっと丸めたようなもの”というのも納得がいくのではないでしょうか。
1.1.2 本単元で学ぶ内容
ここからは次のことを学びます。
- 物体を回転させる作用である“力のモーメント”とは何か?どのように計算すべきか?
- 物体を回転させまいとする作用である“慣性モーメント”とは何か?どのように計算すべきか?
- 物体にはたらく力のモーメントと慣性モーメント、角加速度の関係は?
- 角加速度、角速度、変位の関係
- 回転のエネルギー(回転エネルギー)と回転の運動量(角運動量)とその保存とは?
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Work and energy (JP)
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剛体の回転と力のモーメント(トルク)のつりあい
今までは物体の回転については考えてきませんでしたが、この単元ではそれを考えていきます。「力学」という名前が示すように、回転もやはり「力」によって説明することができます。「力」と「回転」の関係を理解してしまいましょう。
例えば机の上に筆箱を置き、横から、机の上を滑らせるように押してみましょう。真ん中付近を押すと、筆箱は回転せずにまっすぐに進みますが、筆箱の端を押すと回転します。物体を押したり引いたりするときには、その場所によって回転したりしなかったりするということです。この例からわかるように、回転させようとするはたらきは、必ず力によって生じ、それは、「力の大きさ」と「場所」によって変わります。
今まで物理を学んできた中では、回転を考えてきませんでした。無視していたと言えます。物体に大きさがあれば、必ず回転をすることがあり得ますので、今までは物体の大きさを無視していたと、考えることもできます。
なお、大きさを考慮すると、つぶれたり曲がったりと、形が変わってしまうこともあり得ますが、ここでは、力を加えてもつぶれたり曲がったりしない硬いものを考えます。そのような硬いもののことを“剛体”と言います。つまり、大きさがあるが形を変えない硬いものの回転を考えるというのが本単元でやることです。
そのような(今まで考えてきたような)大きさのない想像上の物体のことを、物理では質点と呼びます。今までの物理では質点の運動を考えていたということです。
さて、この単元では物体の大きさを考慮し、物体の回転を考えます。本単元での流れは次の通りです。
まず最初に、今まで学んできた内容と、この単元で学ぶ内容の関係性を見てみます。続いて、本単元で学ぶ範囲を明確にします。その後、実際に本単元で学ぶ内容を一つ一つ見ていきます。
回転+並進=運動のすべて とはどういうことか?
ものを放り投げると回転しながら運動します。一見、複雑な運動に見えますが、詳しく見ると(正しく見ると)、とてもシンプルな運動であることが分かります。
木槌が放り投げられている例に、木槌の重心に着目して運動を眺めてみましょう。

まず、重心(赤い点)そのものの運動に着目してみると、重心は今まで学んできたような、きれいな放物運動をしていることが分かります。続いて、物体の重心が重なるようにして描くと、物体は一定の速さで回転していることが分かります。

回転を無視して、点の移動のみをみるとき、この運動を並進運動と言います。他方、物体の移動を無視して回転のみをみるとき、この運動を回転運動と言います。
この木槌の例で分かる通り、実は、一般の物体の運動は重心の並進運動と、重心周りの回転運動と見ることができるのです。このように見ると、物体の運動=並進運動+回転運動ということができるのです。
この剛体の運動を学ぶことで、形を変えない物体の運動と力との関係は余すことなく表されることになるのです。「物体の運動は、物体にはたらく力によって決まる」が真に正しくなります。
波を表す用語、物理量
1.1 波の分類
身の回りの波は、様々な性質を有している。次のような切り口で分類できる。
◎(媒質で分類)水面波、音波、光
※媒質とは、波を伝えるモノ
◎(波の振動の様子で分類)横波と縦波
◎(波形で分類)正弦波、矩形波、それ以外
◎(波面の形で分類)一次元波、平面波、球面波
※波面とは、同じ位相の点の集まり
◎(波の連続性で分類)連続波とパルス波
◎(波の伝わり方で分類)進行波と定常波
※例えば、一本のロープを1度揺らしたときの波は、1次元場を進む横波であり、正弦波でも矩形波でもない形のパルス波である。また例えば、音叉で鳴らす音は3次元空間内に広がる縦波であり、正弦波の連続波として表すことができる。
1.2 波を表す用語・物理量とその特徴
物体の運動を学んだ時、加速の程度を表すために加速度という量を作り(定義し)、用いてきた。これと同じように、まずは波の現象を表すために、いろいろな言葉を作り(定義し)、現象に対する見方の分解能を高めていく。
波の単元では次のような単語を用いる。
|
|
用語 |
記号 |
説明 |
|
山、谷 |
|
一番高いところを「山」、一番低いところを「谷」という。 |
|
|
媒質、波源、 波面、波形 |
|
振動を伝える物質を「媒質」、振動を始めた場所を「波源」、振動の状態が等しい点をつらねた面を「波面」、ある瞬間の媒質の各点をつらねた曲線を「波形」という。 |
|
|
変位 |
y |
基準からの媒質のズレを「変位」という。 ※「ある時間・ある場所の変位」を考えることが多い |
|
|
波の(伝わる) 速さ |
v |
波の形が進む速さを「波の(伝わる)速さ」という。 ※波の場合、媒質は移動しない。 ※波が速さは,その波を伝えている物質(=媒質という)によって決まる。 |
|
|
正弦波,連続波の場合 |
振幅 |
A |
媒質の各点はその場所で単振動をしている。そのため、波の様子を表すのに、単振動の考え方を応用すると便利である。その単振動の振幅、角振動数、周期、振動数、位相※をそれぞれ波の「振幅」、「角振動数」、「周期」、「振動数」、「位相」という。 |
|
角振動数 |
ω |
||
|
周期 |
T |
||
|
振動数 |
f |
||
|
位相 |
θ |
||
|
波長 |
l |
隣り合う山と山の(あるいは谷と谷の)間隔を「波長」という。 |
※位相という言葉は、正弦波以外でも用いることがある。
1.3 物理量同士の関係式
続いて、物理量同士の関係がどのようになっているのかを考えてみる。一つの現象を様々な角度から様々な量、用語で説明しただけなので、別の量同士で言い換えることが可能なことがある。
①周期$T$と振動数$f$の関係:$T=\frac{1}{f}$
例えば周期$T$が0.2秒であれば0.2秒ごとに同じ波が来るということであり、1秒当たりの波の回数にすれば5回になる。つまり振動数$f$は5Hzになるということである。
よって$T=\frac{1}{f}$
②波の速度$v$、振動数$f$、波長$\lambda$の関係:$v=f\times \lambda$
これも、分かってしまえば、あたりまえの関係である。速度$v$〔m/s〕は波が1秒間に進む距離である。一方、波は1秒間に振動数$f$〔Hz〕回振動し、1回毎に波長$\lambda$〔m〕だけ進むため、波が1秒間に進む距離は波長を$f$個つなげた長さであり、$f\times \lambda$と表すこともできる。よって$v$、$f$、$\lambda$の関係は$v=f\times \lambda$と表せる。
なお、これは次のように考えてもよい。1周期の間に進む距離が波長$\lambda$〔m〕である。この距離$\lambda$〔m〕は速さ$v$〔m/s〕の波が1周期分の時間$T$〔s〕の間に進む距離である。よって$\lambda=v \times T$と表せる。これに$T=\frac{1}{f}$を代入することで が得られる。
いずれにしても、$v=f\times \lambda$である。
波動
波(または波動)とは、空間に生じた振動が次々に周囲に伝わっていく現象のことである。日々の生活で用いる電波や、身のまわりの音、光もすべて振動が伝わる波である。人々はこれらの性質をよく理解し、その性質を利用して様々な技術を実用化させてきた。

本単元では多岐にわたる現象を扱うが、あらゆる現象は波の基本的な性質から説明することができる。力学のあらゆる現象がma=Fを用いて説明できるように。
そこで、この単元ではまずは様々な現象を学び、その後、波の性質から現象を理解するという順番で理解を深めていく。媒質が異なると、同じ波の性質であっても異なる現象として見えるが、異なる媒質における現象を比較しながら学習し、波の性質に対する理解を深めていく。
次のような流れで学びを進めていこう。
1.身近な波の例と波を表す量、用語
2.波に共通する原理と性質
3.今から理解したい事
4.音や光の性質
5.波の基本的な性質① 反射
6.波の基本的な性質② 屈折
7.波の基本的な性質③ 回折
8.波の基本的な性質④ 干渉
9.掘り下げたい現象① ドップラー効果
10.掘り下げたい現象② レンズと球面鏡
11.正弦波における波の式
第2章 等加速度直線運動(総集編)
力学の肝は「ある物体の動きは、その物体にはたらく力によって決まる」です。前の章では力について学んだので、この章では物体の動きについて学びます。
目次:
- 2.1 物体の運動の様子は、位置 OR 速度 OR 加速度で表現する
- 2.2 物体の運動をどう定義し、測り、式に表し、どう図示するのか?
- 2.3 等加速度直線運動と大切な3つの公式
- 2.4 等加速度直線運動の問題を解いてみる
2.1 物体の運動の様子は、位置 OR 速度 OR 加速度で表現する
位置、速度、加速度は、普段の生活でも使っている言葉だと思いまが、物理では、これらの言葉の意味だけでなく、どのように数字で表すのかということも、正確に知っておかなければなりません。のちに出てくる定義や定義式を、まずはしっかりと覚えましょう。
また、物理では、位置、速度、加速度の間の関係も意識する必要があります。これらの言葉は、一つの物体が動く様子を表す、3つの異なる方法なのです。一つの運動を、3つの表現で表しているだけなので、例えば時間ごとの位置が分かれば時間ごとの速度が分かり、時間ごとの速さが分かれば、時間ごとの加速度もわかるというように、互いに関係しているのです。この関係が分かっていると、この単元の最後に、様々な事柄が結びついて見えてくると思います。
まずは、物理における、物体の動きの表し方について学びましょう。
2.2 物体の運動をどう定義し、測り、式に表し、どう図示するのか?
位置、速度、加速度の定義
時間と時刻
速度や加速度などの説明に入る前に、時間と時刻の違いについて触れておきます。似ているのですが、物理では異なる意味で使っています。具体的には、時刻はその瞬間、時間はある瞬間と別の瞬間の間の長さとして用いています。次の数直線を見て理解してください。
時刻は数直線上の点の事です。しかし、時間は数直線上の2点の間の距離の事です。どちらも単位は「秒(s)」ですし、あだ名は「time」からとった「t」ですのでわかりにくいです。必要になったときに、ここに戻ってきて確認しましょう。

位置の表し方
「位置」という言葉の意味は、日常的に用いている「位置」と同じです。
しかし、物理では位置を表すときに、座標軸を用いて表します。一直線上の運動でしたら1つの座標軸のみを用いて表現することができますし、2次元の運動でしたらx軸、y軸などの2つの座標軸を用いて表現します。なお、単位は「m」で表わします。
変位
位置の変化のことを「変位」と言います。この「変位」はどちらの向きに、どれだけ変化したのかを表すベクトル量である点に注意してください。また、変位は最初と最後の位置の変化を表すベクトルであり、道のりではないので注意してください。
例えば下の絵では、家から公園まで歩いたときの「変位」は、北西に423m(←ベクトルなので向きと大きさ)と答えることになります。なお、道のりはは600mほどです。混同しないようにしましょう。
なお、変位のあだ名は「x」で、単位は「m」です。
(あだ名とは、変位を表すときによく使われる文字のことです)

変位の定義式
変位x〔m〕=移動後の位置〔m〕-移動前の位置〔m〕
※変化を聞かれたら「あと」―「まえ」
速度
単位時間当たりの変位(位置の変化)のことを速度といいます。
物理では、基本的に距離の単位には「m」、時間の単位には「秒(s)」を用いますので、速度の単位は「m/s」が多いです。
「単位時間当たりの変位」とありますが、単位時間は1秒の事なので、この定義は「1秒あたりの変位」だと思ってしまいましょう。
また、「単位時間当たりの変位」とありますが、変位はベクトル量なので、速度もベクトル量です。
速度は英語で「velocity」なので、あだ名は「$v$」を用いることが多いです。なお、時刻ゼロ秒の速度の事を初速度と呼び、速度「$v$」にゼロ秒の「0」を添え字として付けた「$v_0$ 」で表すことも多いので合わせて覚えてしまいましょう。
速さと速度の違いについて、疑問に思うこともあるかもしれませんが、「速さ」とは「速度の大きさ」だと思うと分かりやすいです。大きさなので、「速度」の向きを無視したもので、スカラー量です。
計算式は次の通りです。この式を、定義から導かれる式という気持ちを込めて、速さの定義式と呼びましょう。(覚えるべきは定義です。定義から定義式は自分で考えてみてください。)
定義式:
速さv〔m/s〕=変位x〔m〕÷時間t〔s〕
例えば、先ほどの家から本屋さんに行く例において、家から本屋さんの角までに100秒、さらに本屋さんの角から公園までさらに100秒かかったとしたら、本屋さんの角までの速度は300m÷100s=3m/s、本屋さんから公園までの速度は同じく300m÷100s=3m/s、しかし、家から公園までの平均の速度は423m÷200s=2.15m/sとなります。ずっと3m/sの速さで歩いていたのに、家から公園までの平均の速度が2.15m/sとは気持ち悪いかもしれませんが、速度の定義にのっとって考えるとそのように計算されます。まずは、定義を意識しましょう。
速度の定義から定義式を導くには?
「あめ玉が15個ある。3人で分けると一人当たり何個か?」と聞かれたとき、我々は「15(個)÷3(人)=5(個/人)」と計算します。「一人当たり」と聞かれたら、当たり前のように人数で割り算をするということをしているのです。速度を計算するときも同じです。

速度は「単位時間当たりの変位(位置の変化)」なので、計算するときには「単位時間」で割り算をすれば良いのです。単位時間を1秒とするのであれば、秒数で割ればいいのです。
よって、「速さv〔m/s〕=変位x〔m〕÷時間t〔s〕」と分かります。
「○○当たりの」を計算するには「◯◯」で割り算する
また、蛇足ながら、ここで単位のみに着目してみましょう。実は単位を覚えているだけでも、計算の方法はだいたい分かります。例えば速さの場合、速さの単位は〔m/s〕です。距離の単位〔m〕を時間の単位〔s〕で割ったものです。改めて速さの定義式を見てみると、距離を時間で割っています。つまり、例えば〔m/s〕という単位自身をみることで、「〔m〕で表した「距離」を〔s〕で表した「時間」で割ったものが速さなのですよ」と教えてくれているのです。
等式では単位も必ず両辺で一致する
「単位時間当たりの」ってなに?
「単位時間あたりの」と言われると分かりにくいかもしれませんので、例を用いて説明してみます。
例えば、時速100kmという速さは「1時間当たり」100km進む速さということを言っていますし、秒速30万kmという速さは「1秒あたり」30万km進む速さであると言っています。このように、一口に速さと言ってもいろいろなあらわしかたをしていますが、 「1時間当たり」は1時間を基準として考えたものであり、「1秒あたり」は1秒を基準として考えたものです。この「1時間を基準として考えた」というのが、言いかえると 「単位時間を1時間とした」ということです。
次の問題を通して、この考え方を理解してみましょう。
問:時速10kmは秒速何mでしょうか?
上の考え方に基づくと、時速10kmは「1時間当たり10km移動する」速さということです。我々は単位をm/sに替えたいので、上の「1時間当たり10km移動する」を「秒」と「メートル」を用いて表せばよいのです。
1時間は60分、1分は60秒なので、結局1時間=60分=60×60秒=3600秒です。
1kmは1000mなので、10kmは10000mです。
そのため、「1時間当たり10km移動する速さ」を言いかえると「3600秒の間に10000m移動する速さ」となります。よって(位置の変化を時間で割ればいいので)10000÷3600=2.77777・・・〔m/s〕となります。問題集でよく見る次の式は上の説明を式にしたものですので、理解してみてください。
加速度
加速度は加速の度合いを表しています。イメージしにくい人が多いようなので、まずはイメージから考えてみます。
「加速度は加速の度合い」であると述べました。「加速」というのは、「速さが増す」ということなので、加速度は「どのくらい速さが増しているか」を表していることになります。一方で、急に速くなる方が加速の度合いは大きいと感じるはずなので、加速度は時間にも関係しているはずです。
例えば、信号待ちをしているバイクとトラックがあるとしましょう。信号が青になり、しばらくすると、どちらも時速60kmになります。しかし、バイクはあっという間に時速60kmまで加速する一方で、トラックはゆっくりと加速して、ようやく時速60kmになります。このような場合、バイクの方が「加速の度合い」、加速度が大きいと考えることでしょう。時速0kmから時速60kmへと変化するという同じ状況であっても、それにかかる時間が短いほど、加速度は大きいと考えるのです。
そこで物理では、「単位時間当たりの速度の変化」のことを加速度と呼んでいます。
前述のとおり、物理では単位時間として1秒を用いますので、上の定義を「1秒当たりの速度の変化」と読み替えて覚えましょう。(すると、加速度の定義式はどのようになるでしょうか?)
なお、加速度は英語で「acceleration」と言いますので、あだ名は「a」です。単位は「m/s^2」です。(なぜこのような単位になるのでしょうか?定義式の右辺の単位から考えてみてください。)
加速度の定義式:
加速度a〔m/s^2〕=速度vの変化〔m/s〕÷時間t〔s〕
なお、変化した間の量を表すために「 (←デルタと読む)」を用いることがあります。例えば速度vの変化量を「 」と表し、時間、つまり時刻の変化量を「 」と表します。これを用いると上の定義式は次のように表すことができます。
加速度の定義式(文字を用いた表記):
$a=\frac{\Delta v}{\Delta t}$
単位時間当たりの速度の変化なので、速度の変化を時間で割っています。単位時間に秒を使うのであれば、速さの変化〔m/s〕を時間〔s〕で割ります。
また、右辺の単位だけを見ると〔m/s〕÷〔s〕なので、〔$\frac{m/s}{s}$〕=〔\frac{m}{s^2}$〕=〔$m/s^2$〕となることから、加速度aの単位が〔$m/s^2$〕であると分かります(等式においては、必ず両辺の単位が一致するからです)。
加速度の定義「単位時間当たりの速度の変化」だけを覚えていれば、計算の方法も思い出せるし、単位も思い出せるはずです。繰り返しになりますが、まずは定義をしっかりと覚えましょう。
加速度と速度の違い
加速度と速度の違いが分かりにくいという人がたくさんいるかと思います。次のクイズを通して考えてみてください。
クイズ:
街中の電車と新幹線、動き出すときに加速度が大きいのはどちらでしょうか?
正解は、電車です。実感としては、動き出した時によろめいてしまう度合いが強いほど、加速度が大きいと言えます。電車は動き出すときによろめいてしまいますが、新幹線はいつ動き出したのか分からないくらい、静かに動き出します。新幹線の加速度は小さいのです。では、なぜ新幹線の方が、最高速度が大きいのでしょうか?
クイズの答え:
次のグラフから説明できます。グラフは電車と新幹線の速さと時間の関係を表したグラフです。動き出した直後を見ると、電車の方が速いです。新幹線はゆっくり動き出すので、動き出した直後まだまだ遅いです。加速度が小さいと言えます。しかし、新幹線はずっと加速し続けます。加速の度合いは小さいけれど、ずっと加速していると、最高速度は大きくなるのです。新幹線のように加速度が小さくても、長い間加速し続ければ大きな速度を持つことができるのです。改めて、加速度の定義「単位時間当たりの速度の変化」であることを思い出すと、ある瞬間の速度と、加速度の大きさは無関係であることが分かると思います。

なお、これは、加速度の定義式を変形してみてもわかります。
$\Delta v=a \times t$
このように、速度の変化は加速度aだけで決まるのではなく、加速している時間tにも依ることが分かります。その瞬間の速さは、加速度の大きさで決まるわけではありません。
速さの変化が、加速度と、加速している時間によって決まるのです。この違いをイメージしておいてください。
変位、速度、加速度がベクトルであるとはどういうことか?
ベクトルは、向きを考えないと足し算ができない量であると紹介しました。先に述べた通り、変位、速度、加速度も向きを持つベクトル量です。これらがベクトル量であるということを、次の例を用いて実感してください。
速度の例)
A君は街中で、動く歩道を見つけました。0.5m/sの速さで(右向きに)動いています。A君はこの上を1.5m/sの速さで(左向きに)逆走しました。このとき、A君は1.5m/sの速さ、動く歩道は0.5m/sの速さで移動していますが、逆走するA君は結局1.0m/sの速さで(左向きに)移動することになるのです。歩道とA君の速さを(向きを考えずに)足すと0.5m/s+1.5m/s=2.0m/sとなり現実と異なることからも、この場合にはやはりA君と動く歩道の向きを考えなければいけないことが分かります。つまり、速度はベクトル量なのです。
それゆえ、「速度は?」と問われたら向きも含めて答えるべきです。今回の例では「左向きに1.0m/sです。」と答えるべきです。(速さは向きを無視した「速度の大きさ」であるととらえましょう)

座標軸を用いた表現
力を学んだ時に、座標軸を用いてベクトルを表す方法を紹介しました。例えば足し算をするときに便利でした。物体の位置や速度、加速度も座標軸を用いて表すととても便利です。
例えば、先の動く歩道の例であれば、右向きを正としたとき、歩道が動く速度は「+0.5m/s」、人が歩く速度は「-1.5m/s」、最終的に人が移動する速度は「+0.5+(-1.5)=-1.0」となり、マイナスがついているので、(正の向きと反対向きの)負の向き、つまり左向きに1.0m/sであると計算できます。
符号がつく計算は慣れるまでは大変かもしれませんが、慣れてしまえば圧倒的に楽になるので、ぜひ練習をして慣れてください。

座標の向きは右向きを正にしないといけないの?
座標の向きに決まりはありませんし、ましてや覚えるものでもありません。
上の例を、先ほどと逆向き、左向きを正として考えてみましょう。その場合には、歩道が動く速度は「-0.5m/s」(←今度は右向きはマイナスの向きです)、人が歩く速度は「1.5m/s」、最終的に人が移動する速度は「-0.5+1.5=+1.0」となり、プラスがついているので、正の向き、つまり左向きに1.0m/sであると計算できます。これは上の右向きを正として考えたときの結果と同じです(←当たり前です)。
左右のどちらを正の向きにするかは、自分自身で決めるものです。正の向きを自分自身で決め、その状況設定の中で正しく符号をつけてあげれば、最後には必ず座標の向きによらず、計算によって同じ現象が得られます。

次のトピックで扱うグラフ化の際にも、正の向きを決めてグラフ化します。
ベクトルの向きは符号で表す
図示の仕方
式を眺めていても実感は湧きにくいです。少しでも物体の運動をイメージしやすいように、物理学ではできるだけ可視化します。図やグラフをたくさん使うのです。物体の運動でも、時々刻々変化する位置xや速度v、加速度aを、グラフにして表します。
x-tグラフ 時刻tと位置xの関係を表すグラフ
v-tグラフ 時刻tと速度vの関係を表すグラフ
a-tグラフ 時刻tと加速度aの関係を表すグラフ
特に大切なのはv-tグラフです。v-tグラフが分かれば、実は各時刻での位置も加速度もわかってしまうのです。
簡単な具体例を用いてv-tグラフからx-tグラフやa-tグラフが求められることを実感してみましょう。
例)
一定の速度5m/sで運動している次のグラフの場合を考えてみます。

時刻3sでの位置は、速さが一定であることから5m/s×3s=15mと求められます。また、同様にして、時刻5sでの位置は5m/s×5s=25mと求められます(ちなみに、これはグラフとx軸で囲まれる面積を計算する式と全く一緒です)。
具体的な時刻ではなく、時刻をt〔s〕として位置を求めても、同様に5〔m/s〕×t〔s〕=5t〔m〕と求められます(ちなみに、これもグラフの面積を求める計算式と一緒です)。
ここからx-tグラフは次のようになると納得できます。

また、速度は変化していない、つまり加速も減速もしていないので、加速度はどの時刻でも(時刻3sでも5sでも)ゼロであることが分かります(ちなみに、こちらは時刻3sや時刻5sにおけるグラフの傾きと一緒です)。ここからa-tグラフは次のようになることが納得できます。

上の例から、x-tグラフ、v-tグラフ、a-tグラフの関係についてさらに考えてみます。
先の例の中で、変位を求める計算式が「v-tグラフとx軸で囲まれる面積を求める計算式」と全く一緒であることや、加速度を求める計算式が「グラフの傾きを求める計算式」と全く一緒であることを述べました。実は、これらの計算式の一致は、速度が一定の場合でなくても、どのようなときにでも成り立ちます。
つまり、一般に次のことが言えます。
・v-tグラフの面積(v-tグラフとx軸で囲まれる部分の面積)を求めると変位が分かる
・v-tグラフの傾きを求めると、加速度が分かる
このように、どんなv-tグラフであっても、各時刻の位置や加速度が導けるのです。(実際には、v-tグラフの傾きや面積が具体的に計算できるとは限りません。)

ちなみに、実は上図に示したように、加速度のグラフの面積から速度も分かりますし、変位のグラフの傾きから速度も分かります。上図のように、x-tグラフ、v-tグラフ、a-tグラフを描いたとき、それらは互いに面積を求めると左のグラフの情報が得られ、傾きを求めると右のグラフの情報が得られるという関係にあります。
グラフの面積はタテ×ヨコ、グラフの傾きはタテ÷ヨコ
ここで、さらに、一般化させましょう。
上で見た通り、v-tグラフでは面積が変位、傾きが加速度になりました。これは、面積を求めると、「y軸が表す速さ×x軸が表す時間」の答え、つまり距離を求めることになるためであり、また、傾きを求めると、「y軸が表す速さ÷x軸が表す時間」の答え、つまり加速度を求めることになるためです。
実は、他のグラフでも面積を求めると「y軸が表す量×x軸が表す量」を求めることになりますし、傾きを求めると「y軸が表す量×÷x軸が表す量」を求めることになります。
グラフの面積はタテ×ヨコ、グラフの傾きはタテ÷ヨコと覚えておきましょう。
グラフの面積はタテ×ヨコ、グラフの傾きはタテ÷ヨコ
微分、積分という言葉を聞いたことがあるでしょうか?高校2年生ころから数学で学ぶ概念ですが、実は物理では非常にたくさん(こっそりと)出てきます。
上の図のように、面積を求める操作を積分、傾きを求める操作を微分であると今は思っておいてください。正確な定義ではありませんが、物理においては、十分です。先ほどグラフで見た関係を言い換えると、次のように言うことができます。
・a-tグラフの面積を求めると速度が分かる ⇒ 加速度を積分すると速度が分かる。
・v-tグラフの面積を求めると変位が分かる ⇒ 速度を積分すると変位が分かる。
・x-tグラフの傾きを求めると速度が分かる ⇒ 変位を微分すると速度が分かる。
・v-tグラフの傾きを求めると加速度が分かる ⇒ 速度を積分すると加速度が分かる。
v-tグラフの面積や傾きを用いて変位や加速度を求めることに対して便利そうだと思えた人であれば、きっと微分や積分の便利さを想像することができるのではないでしょうか。ぜひ数学での授業を楽しみにしていてください。もしくは自分で学んでみましょう。
2.3 等加速度直線運動と大切な3つの公式
さて、ここまで理解したら、「等加速度直線運動」について考えてみます。「等加速度直線運動」とは等しい加速度で一直線上を動く運動のことです。
この単元で3つの公式が重要になってくるので、まずはその公式たちを、例題を通して導出しましょう。
例)
下図のように、加速度aで等加速度直線運動をしている物体がある。この物体は時刻0秒において速さがv0である。
問1 時刻t〔秒〕における速さvを求めよ
問2 時刻0秒から時刻t〔秒〕における変位xを求めよ
問3 速さがvになるまでに移動した距離xを求めよ
(※問1と問3で同じ文字vを使っていて、気持ち悪いですが、結果を公式としてまとめたい都合上、気持ち悪さには目をつぶってください。気持ち悪くない人はこのコメントは無視してください。)
解答:
問題の設定をグラフ化したのが右図です。加速度が一定なので、速さの変化が一定になるように、v-tグラフを直線で描いています。

※v-tグラフでは、タテ軸は速さ、ヨコ軸は時間なので面積は速さ×時間=変位、傾きは速さの変化÷時間=加速度となる。
グラフの面積はタテ×ヨコ
グラフの傾きはタテ÷ヨコ
問1の答え
時刻0秒でv0、t秒間加速度aで速度が変化しているので、
$v=v_0+at$ ・・・(i)
問2の答え
時刻0秒から時刻t秒までの変位は、x=0とx=tの間で、グラフとx軸に囲まれている灰色部分の面積を求めればよい。
よって、台形の面積を求める公式を用いて
$x=(v_0+(v_0+at))\times t \times \frac{1}{2}$ よって
$x=v_0 t + \frac{1}{2} at^2$ ・・・(ii)
問3の答え
この問題は2段階で考えてみましょう。
まず、速さがvになるまでの時間t1は
$v=v_0+at_1$ よって
$t_1 = (v-v_0)/a$
次に$t_1$\秒までに移動する距離xを求めて
$x=(v_0+(v_0+at_1)) \times t \times \frac{1}{2} = v_0 t_1 + \frac{1}{2} a t_1^2$
t1に上の値を代入して整理すると、
$x=v_0 \frac{(v-v_0)}{a}+\frac{1}{2} a {\frac{v-v_0}{a}}^2$
両辺に2aをかけて
$2ax=2v_0(v-v_0)+(v-v_0)^2$
整理すると
v^2-v_0^2=2ax ・・・(iii)
ここまでで、例題の答えが出そろいました。しかし、大切なのはここからです。
実は、今求めた式(i), (ii), (iii)は、加速度aや初速度v0、時刻tがどのような値であっても変わりません。そのため、どのような状況においても使うことができます。その便利さは、この後、別の例題を通して実感してみてください。
なお、このように覚えておくと便利に使える式を公式と呼びます。
等加速度直線運動の3つの公式
(i) $v=v_0+at$(速度 と時間 の関係式)
(ii) $x=v_0 t + \frac{1}{2} at^2$(位置 と時間 の関係式)
(iii) $v^2-v_0^2=2ax$(位置 と速度 の関係式)
例題)
下図のように、加速度1〔m/s2〕で等加速度直線運動をしている物体がある。この物体は時刻0秒において速さが1〔m/s〕である。
問1 時刻3〔秒〕における速さvを求めよ
問2 時刻0〔秒〕から時刻3〔秒〕における変位を求めよ
問3 速さが3になるまでに移動した距離を求めよ
加速度aが1〔m/s2〕、初速度v0が1〔m/s〕、時刻3秒として、また問3においては速度3m/sになるまでの時間を考えるならば、次のようなグラフを用いて上のように考え、問1から問3の答えを4m/s、15/2 m、4.5mと得ることができます。
先に求めた3つの公式は、どのような値を入れてもよかったので、加速度aに1、初速度v0に1、tに3、問3のvに3を入れてみると、それぞれ次のように求まります。
問1
公式(i)$v=v_0+at$ にそれぞれ代入すると、v=4
問2
公式(ii)$x=v_0 t + \frac{1}{2} at^2$ にそれぞれ代入すると、x=3+4.5=7.5
問3
公式(iii)$v^2-v_0^2=2ax$ にそれぞれ代入すると、x=4.5
※もちろん公式を用いなくても、グラフを見ながら考えることで同じ答えを得ることができます。
具体的な数字を入れた計算をすると、他の問題には使えませんが、先ほど公式を求めたときのように、文字で計算すると、どのような値を入れても成り立つ式を作ることができます。
文字を入れて計算すると、どの数字の場合であっても、一般的に成り立つ式ができます。一般的に成り立つようにすることを「一般化する」などと言いますので、公式は一般化された式ということができます。
なお、公式は上のように、グラフを描いて導くことができますので、忘れるたびにグラフから導いてみてください。そのうち、正確に覚えられるようになります。
何のために単位の確認をするの?
以前、等式では必ず単位も確認せよ。と出てきました。両辺の単位を比べると、間違いがあったときに気が付くことができますので、とても便利です。ここでそのやり方を見てみましょう。
例えば、位置 と時間 の関係式($x=v_0 t + \frac{1}{2} at^2$)を用いて考えてみます。
左辺はxなので単位は〔m〕です。
一方、右辺は1/2at2なので〔m/s2〕×〔s〕×〔s〕=〔m〕です。
(1/2はただの数なので単位はありません)
このように、等式に間違いがない場合には、左辺と右辺の単位は一致することが確認できます。
さて、ここで、例えば右辺の第一項を誤って$v_0 t^2$と記憶していたとしましょう。
その場合、この$v_0 t^2$の単位を確認すると、〔m/s〕×〔s〕×〔s〕=〔ms〕となり、左辺と一致しません。$v_0 t^2$が誤りであることが分かるのです。このように単位を調べることは、間違いに気づくという点でも有用です。ぜひ、常に単位を気にするようにしましょう。
先ほどの「微分・積分って便利なの?」で述べたグラフ同士の関係は、微分、積分という言葉を用いると次のように表すことができます。
・a-tグラフの面積を求めると速度が分かる ⇒ 加速度を積分すると速度が分かる。
・v-tグラフの面積を求めると変位が分かる ⇒ 速度を積分すると変位が分かる。
・x-tグラフの傾きを求めると速度が分かる ⇒ 変位を微分すると速度が分かる。
・v-tグラフの傾きを求めると加速度が分かる ⇒ 速度を積分すると加速度が分かる。
さらに、グラフの関係を意識しながら3つの公式を眺めると、次のように変位、速度、加速度が微分、積分によって結びついていることが分かります。ここまでくると、式やグラフの関係というよりは、より本質的に、変位、速度、加速度という量が互いに微分・積分という関係によって結びついていることが実感として持てるようになってくるのではないでしょうか?なお、その関係は、速度や加速度という言葉の定義そのものに関係していますので、改めて、速度や加速度の定義を眺めてみてください。

式を用いて解くのとグラフを用いて解くのと、どちらが本質的なのか?
式を用いる方が“本質的”?グラフを用いるのはただのテクニック?といった質問を何度か聞かれたことがあります。式の方を重視するような姿勢がうかがえました。しかし、式から答えを導く方が大切かというと、そんなことは全くありません。
理科では現象を説明できること、もしくはその説明のための法則を理解することが大切です。現象を式で表すことや、グラフで表すことは、その現象を人間が理解しやすいようにしたものに過ぎません。つまりどちらも表現の一つです。そして、式で表す方が得意な人もいれば、グラフで表す方が得意な人もいると思います。サイエンスを専門とする科学者でも、やはり好みは分かれるのではないかと思います。ぜひ、理解しやすい方で理解してください。そして、どちらの表現も行き来できるのが望ましいです。ぜひ理解しやすい方から理解してみてください。
高校物理の問題では、式でないと解けないという問題はないと思いますので、個人的にはv-tグラフの方がおすすめです。直感的に分かるので、理解しやすい人が多いと思います。
2.4 等加速度直線運動の問題を解いてみる
この単元は、物体の落下に関する問題が多く出題されます。ここで、解き方を理解してください。特に、何度も出てきているように、座標軸を用いた解法で考えていきますので、確実に理解してください。座標軸は今後も長く付き合うことになります。
2.4.1 1次元のとき(問題演習)
ものを落としたり、投げ上げたりして、ある時刻の物体の位置を答えるような問題がたくさん出題されます。教科書を見ると「座標の正の向きを上向きにとる」とか、「下向きにとる」とかが、決まり事のように書いてあるためか、座標の向きの設定方法に決まりがあるかのように感じている方もいるように見受けられます。しかし、座標の向きは自由です。自分で決め、常にそれに従っていれば、必ず正しい答えにたどり着きます。座標の向きは自由です。無駄に覚えようとするのは絶対にやめましょう。
必要なのはv-tグラフに対する理解、もしくは3つの公式に対する理解のみです。
例題1)
高さ19.6mの高さから、物体を自由落下させる。なお物体を離した瞬間を時刻0秒とする。
(1) 時刻1秒における物体の速さはいくらか?
(2) 物体が地面につくまでの時間はいくらか?
(3) 物体が地面についたときの速さはいくらか?

解答:
座標の取り方が自由であるということを示すために、上向きを正とした場合と、下向きを正とした場合の2通り考えてみます。さらに、グラフを利用した解き方と公式を利用した解き方に分けてそれぞれ解説します。
まずは、上向きを正として考えてみましょう。
方法1上向きを正とし、グラフを用いて考える
速度はだんだんと下向きに速くなっていくので、負の向きに大きくなっていくと言えます。また、重力加速度の向きも下向き、つまり負の向きなので、重力加速度は、9.8にマイナスをつけて「-9.8 m/s2」と表せます。
グラフにすると右のようになります。


グラフを描ければ、問題を解くことは難しくありません。
(1) 時刻1秒における物体の速さはいくらか?
グラフから1秒の時の速度を求めると、(傾きが-9.8なので) -9.8 m/sであるとわかります。なお、マイナスがついているので、向きは負の向き、つまり下向きということが分かります。よって、速度は下向きに9.8m/sであるとわかります。
(速さは?と聞かれているので、速度の大きさである9.8m/sを答えればよいでしょう。)
(2) 物体が地面につくまでの時間はいくらか?
地面までは19.8mなので、時刻0秒からの変位が19.6になる時刻を求めればよいことになります。変位はv-tグラフの面積です。
求める時刻をt1とおいて計算式を立てましょう。
t1における速さは9.8 tより、三角形の面積は です。これが19.6になるので、式は
$t_1 \times (9.8 t_1) \times \frac{1}{2}=19.6$
です。
ここからt1を求めると、t1=2と分かります。つまり、地面につくまでの時間は2秒です。
(3) 物体が地面についたときの速さはいくらか?
(2)より地面につくまでの時間が2秒であるとわかっているので、速度は-19.6m/sであることが分かります。よって求める速さは19.6m/sです。

方法2下向きを正とし、グラフを用いて考える
今度は下向きを正として考えます。先ほどの解説と何が異なるのか注意してみましょう。速度はだんだんと下向きに速くなっていくので、正の向きに大きくなっていくと言えます。また、重力加速度の向きも下向き、つまり正の向きなので、重力加速度は「+9.8 m/s2」と表せます。グラフにすると右のようになります。


グラフを描ければ、問題を解くことは難しくありません。
(1) 時刻1秒における物体の速さはいくらか?
グラフから1秒の時の速度を求めると、(傾きが+9.8なので) +9.8 m/sであるとわかります。なお、プラスなので、向きは正の向き、つまり下向きということが分かります。
よって、速度は下向きに9.8m/sであるとわかります。
(速さは?と聞かれているので、速度の大きさである9.8m/sを答えればよいでしょう。)
(2) 物体が地面につくまでの時間はいくらか?
地面までは19.8mなので、時刻0秒からの変位が19.6になる時刻を求めればよいことになります。変位はv-tグラフの面積です。
求める時刻をt1とおいて計算式を立てましょう。
t1における速さは9.8tより、三角形の面積は です。これが19.6になるので、式は
$t_1 \times (9.8 t_1) \times \frac{1}{2}=19.6$
です。
ここからt1を求めると、t1=2と分かります。つまり、地面につくまでの時間は2秒です。
(3) 物体が地面についたときの速さはいくらか?
(2)より地面につくまでの時間が2秒であるとわかっているので、速度は19.6m/sであることが分かります。よって求める速さは19.6m/sです。

先ほどの上向きを正とした場合と比較してみると、設定した座標によって、現象の向き(重力加速度の向きや速度の向き)を表す符号が異なりますが、計算した結果から得られる現象の向きは(当たり前ですが)同じになります。
このように座標の向きは、符号の扱いさえ気を付ければ自由に設定してよいことが分かります。
方法3下向きを正とし、公式を用いて考える
使える公式は次の3つです。
(i) $v=v_0+at$(速度 と時間 の関係式)
(ii) $x=v_0 t + \frac{1}{2} at^2$(位置 と時間 の関係式)
(iii) $v^2-v_0^2=2ax$(位置 と速度 の関係式)
ここでは下向きを正として考えます。すると、重力加速度が正の向きに9.8なので「+9.8m/s2」と表せます。上の公式においてaで表された加速度は、自由落下の場合には「+9.8m/s2」ということです。
また、自由落下させるということは、初速度v0が0m/sであることを意味しています。
よって、公式を用いる際には、a=9.8、v0=0を代入することになります。
さて、具体的に解いていきましょう。
(1) 時刻1秒における物体の速さはいくらか?
この問題では、時刻1秒のときの速さが聞かれています。ですので、速度と時間の関係を表す公式①を用いましょう。(←このように何が分かっていて何を聞かれているのかを意識して使う公式を選びましょう。)
すでに分かっているa=9.8、v0=0 と、問題で聞かれているt=1を公式①に代入し、求める速さvが分かります。
$v=v_0+at = 0+9.8 \times 1 =9.8$
(2) 物体が地面につくまでの時間はいくらか?
この問題では、地面につくまで、つまり変位が19.6mになるまでの時間が聞かれています。ですので、変位と時間の関係を表す公式②を用いましょう。
すでに分かっているa=9.8、v0=0 と、問題で聞かれているx=19.6を公式②に代入し、求める時刻tが分かります。
$19.6=v_0 t + \frac{1}{2} a t^2 = 0 \times t + \frac{1}{2} \times 9.8 \times t^2$
tについて解くと、t2=4、t=±2秒という答えが得られます。
ここでは、マイナスは不適なので2秒と答えることができます。
(3) 物体が地面についたときの速さはいくらか?
この問題では、地面に着いたとき、つまり変位が19.6mになった時の速さが聞かれています。ですので、変位と速度の関係を表す公式③を用いましょう。
すでに分かっているa=9.8、v0=0 と、問題で聞かれているx=19.6を公式③に代入し、求める速度vが分かります。
$v^2-v_0^2 = 2ax$
$v^2-0^2=2 \times 9.8 \times 19.6$
vについて解くと、v =±19.6秒という答えが得られます。
ここでは、マイナスは不適なので19.6m/sと答えることができます。
さらに、問3は次のように考えることもできます。
問2の答えより、地面に着くのは2秒であるとわかっているので、問3の問題を
「地面に着くのは」ではなく「時刻2秒では」と読み替えるのです。
すると、時刻が2秒と分かっていて、その時の速度を求める問題であると見ることができるので、速度と時間の関係を表す公式①を用いることができるとわかります。
すでに分かっている 、$a=9.8$、$v_0$ と、問題で聞かれているt=1を公式①に代入し、求める速さvが分かります。ここからは省略しますが、答えはもちろん別の解き方でやったときと同じ19.6m/sとなります。
2.4.2 2次元のとき(問題演習)
下の図は、放物運動と鉛直投げ上げ運動、水平方向の等速直線運動をそれぞれバーストモード(カメラの連射)で撮影した様子を表しています。この図が示す通り、放物運動は、水平方向には等速直線運動と同じで、鉛直方向には鉛直投げ上げ運動と同じです。
これを用いて、問題を解くときには、水平方向は等速直線運動と同じであると考えて位置や速度を求め、鉛直方向は鉛直投げ上げ運動と同じであると考えて位置や速度を求めるのです。

次の例題で考えてみましょう。
水平面上で水平面から角度θの向きに、初速度v0で物体を投げた。重力加速度の大きさをgとする。このとき、次の各問に答えよ。

問1
初速度の水平成分vx0、鉛直成分vy0はいくらか?
問2
物体が最高点に達するまでの時間tと、その時の高さhはいくらか?
問3
投げた地点から小球が水平面に落下する地点までの距離lはいくらか?
問4
最も遠くまで飛ばすためには角度θを何度にするべきか?
(ヒント:必要があれば$2sin\theta cos\theta =sin2\theta$を用いよ)
この問題もグラフを用いた方法と、3つの公式を用いた方法で解説します。
(鉛直方向の正の向きは(どちらでもいいのですが)上向きを正として解説します)
グラフを用いた方法
今回は、鉛直上向きをy座標の正の向き、水平右向きをx座標の正の向きとしましょう。この座標を用いる場合、重力加速度の向きは負の向きなので、重力加速度は「-g」と表されます。また、初速度のx成分、y成分はそれぞれ正の向きということになります。
問1
速度はベクトルです。ベクトルである速度を水平方向と鉛直方向に分解せよという問題です。力の分解をしたときと同様に考え、$v_x0 = v_0 cos\theta$ 、$v_y0=v_0 sin\theta$ を得ます。
問2
ここから図を使っていきます。今回の問題ではx方向(水平方向)とy方向(鉛直方向)の両方を考える必要がありますので、それぞれの方向でのv-tグラフを描きます。
y方向のグラフは初速度vy0が正の値で、その後重力加速度-gによって速度が小さくなっていき、さらには速度がマイナスになっていきます(図参照)。速度がマイナスということは、速度は座標の負の向き、下向きになるということです。
さて、問題に取り掛かりましょう。
まずはy方向のグラフを見てみましょう。
最高点に達する瞬間は、速度の向きが上向きから下向きに変化する瞬間なので、v-tグラフにおいては、x軸と交わる瞬間であるということができます。
初速度vy0、傾き-gを考えると、最高点に達する時刻tは、vy0-gt=0という式を満たします。よってt= vy0/gと求まります。
また、最高点の高さhは、赤色の面積を求めればよいので、$h=v_y0 \times v_y0 / g =(v_0 sin\theta)^2/g$
となります。
問3
投げた地点から小球が水平面に落下する地点までの距離lを求めます。
まず、地面に落下するまでの時間を考えると、それはちょうど2tとなります。なぜならば、地面から投げて最高点を通過し再び地面に戻るとき、y方向のグラフにおける赤色の面積(地面から最高点の距離)と青色の面積(最高点から地面までの距離)は同じになるはずですが、そのためには、青の三角形の横幅がtにならないといけないからです。
そのため、求める距離lはx方向におけるv-tグラフの青色の面積を求めればよく、答えはvx0×2tであると分かります。
よって$l=v_x0 \times 2t = 2 \times v_0 cos \theta \times 2 v_0 sin \theta/g$

問4
この問題は面白い問題だと思います。今までの問題でできた問題の答えを解釈して答えを導かなければなりません。
先ほどの答えは、$l=2v_0^2 cos\theta \times sin \theta /g$でした。
これは、水平の到達距離lは同じ初速度であったとしても、投げ上げる角度θによって決まるのだと解釈することができます。
角度θによって決まる、θの関数であるということを式に表すのであれば、左辺を次のように書き換えると表現できます。
$l(\theta) = 2 v_0^2 cos\theta \times sin\theta /g$
この上で問題に戻り、この距離lが一番大きくなる角度θを考えましょう。
ヒントを用いると、次のように書き換えられます。
$l(\theta) = v_0^2/g sin2\theta $
ここまでくると、$sin2\theta$ が一番大きくなるのは$2\theta = 90$度、つまり$\theta = 45$度のときであることが分かります。(ちなみに、このとき$l(\theta)=v_0^2/g$となることが分かります。)
3つの公式を用いた方法
ここでは解法の流れのみを記載します。
問1
前述のとおりです。(グラフを用いた方法の解説を参照)
問2
「最高点に達するまでの時間」⇒「速度がゼロになるまでの時間」と読み替え、
速度と時間の関係式を用いて時間を求めます。
また、速度と距離の関係式を用いて、最高点までの距離を求めます。
(もしくは、求めた時間を用いて、距離と時間の関係式から最高点までの高さを求める)
問3
投げた地点から小球が水平面に落下する地点までの距離lはいくらか?
まずは「水平面に落下するまで」を「変位がゼロになるまでの時間」と読み替え、位置と時間の関係式から小球が地面に着地するまでの時間を求めます。
その後、水平方向には等速で動いていることを利用して、地面に着地するまでの距離を求めます。
問4
前述のとおりです。(グラフを用いた方法の解説を参照)
第1章 力と 力のつりあい(総集編)
力学の肝は「ある物体の動きは、その物体にはたらく力によって決まる」です。この章では、まずは力について学びます。
- 1.1 ベクトルであるとはどういうことか? 力を例に。
- 1.2.作用反作用の法則とは何か?
- 1.3.ベクトルである力を、どう定義し、測り、式に表し、図示すべきか?
- 1.4.力の分類と力の種類
- 1.5.絶対に迷わない力の正しい見つけ方
- 1.6.力の合成、力の分解 と その方法
- 1.7.力のつりあい
- 1.8.力のつりあいの問題を解いてみる
1.1 ベクトルであるとはどういうことか? 力を例に。
力については、生活の中で知っていることも様々ありますので、ここでは、力を考えるうえで、一番大きな変更点をつかみたいと思います。力の、とても不思議な性質です。
力の足し算
次のような状況を考えてみましょう。2人で約10kgの荷物を持っています。

仲良く近くに並んで持っているときには、1人で持つときの半分の力で持つことができます(楽です!)が、2人の距離が離れるにしたがって(腕の間の角度が大きくなるにしたがって)1人1人の力は大きくなってしまいます(辛くなります!)。特に、腕の間の角度が120度の時には、1人で持っているときと同じ強さで引っ張ることになるようです。
もっている荷物が同じであれば、荷物を持ち上げるために必要な力の大きさ(上向きの力の大きさ)は、腕の角度によらず同じはずです。それなのに、1人で持っている力と同じということは、どういうことでしょうか?
図で示すと次の通りです。力が大きければ矢印を長く、小さければ短く、半分であれば長さを半分に描いています。また、後述しますが、力の大きさはN(ニュートン)と呼ばれる単位で測ります。約10kgの物体を持ち上げる力が100Nほどです。

小学校以来100+100=200と習ってきたのに、力の場合1人分(100N)と1人分(100N)の力を合わせても2人分(200N)にならないことがある、ということです。つまり、力においては、普通の足し算は通用しないということです。
力を矢印で図示すると、この現象を理解しやすくなります。

図から眺めていると、このように見えてきます。1本の赤を平行移動して、もう一本の赤につなげてあげると、矢印の先端はなんと緑色の矢印の先端と重なります。この図において、この緑の矢印は青の矢印の長さと同じです。つまり、緑の矢印の大きさが100Nであることを示しています。この100Nの力が2人の力を合わせた力の大きさであり、それが、100Nの荷物を持ち上げているということです。
つまり、力を足すときには、1人分+1人分=2人分という単純な足し算ではなく、矢印をつなげるという足し算をする必要があるのです。実は、力の足し算は数字の足し算ではなく、矢印の足し算なのです。そして、だからこそ、我々は力を矢印で表します。矢印での表記が直感的に便利だというだけではなく、足し算という最も簡単な演算をするためにも矢印で表さなければいけないのです。
なお、実は身のまわりには、力と同様に、矢印で表さなければ足し算すらできない量、というのが、いくつも存在しているのです。そのような量をベクトル量と呼びます。(一方、リンゴの数や温度等、向きを持たない量をスカラー量と呼びます。)
“ベクトル”という単語を覚えることが大切なのではありません。普段見慣れた環境に、思いがけず、未知なるものがあった。そんな、新しい概念との出会いだと思ってください。足し算の仕方すら異なってしまうのですから、今後、新しい量と出会った際には、それがベクトル量なのかスカラー量なのかという点を確認しながら学習を進めてください。
ここまでで力についての認識はアップデートされたはずです。力に関しては、ここまでのところが一番大切であり、理解しにくい所なのではないかと思います。
1.2.作用反作用の法則とは何か?
もう一つ、直観と反しているかもしれない重要な法則を紹介します。ニュートンの運動の第三法則、または、作用反作用の法則と呼ばれる法則です。
作用反作用の法則
二つの物体A、Bがあり、物体Bを物体Aが押しているとき、必ず、物体Bが物体Aを同じ大きさで反対向きに押している
まずはイメージを膨らませてみましょう。両手の手のひらを胸の前で合わせ、右手で左手を押してみてください。右手で押しているはずなのに、左手でも押している感覚があると思います。このように、力は一方が押すとき、必ず、押されている方も同じ大きさで押し返しているというのが、この法則が言っていることです。
現段階では、作用反作用の法則の重要性は認識しにくいと思いますが、着目する物体が2つ以上出てきたときにはとても重要になります。また出てきた時に思い出してください。
(例えば、下のページで解説しているような、物体が2つ出てくる問題の場合には、作用反作用の法則が必要になり、その大切さを実感することができるはずです)
1.3.ベクトルである力を、どう定義し、測り、式に表し、図示すべきか?
ここでは、力の定義(言葉での表し方)、測り方、式での表し方、図示の仕方などを学びましょう。
教科書的な説明が続きますが、主観を排し、客観的な議論をするためには、認識を合わせるためにきちんと説明しておきます。きちんと認識を合わせた上で、その上に精緻な物理学の体系を作っていきましょう。
力の定義
① 物体を変形させるはたらきをもつもの。
①’ 物体を変形させまいとするはたらきをもつもの
②運動の状態(=運動の向きや速さ)を変化させるはたらきをもつもの。
②’ 運動の状態を変化させまいとするはたらきをもつもの
この力の定義は、教科書には必ず書いてあるものですが、これを見てもあまり実感は湧かないかもしれません。実感も湧かないですし、この定義を覚えていても、今後、役に立つことはあまりありません。なぜこのような分かりにくい定義になっているのでしょうか?物理を一通り学んだあと、ぜひもう一度この定義に戻ってきてみてください。そして、なぜこのように定義せざるを得ないのかということを考えてみてください。
力の大きさの測定方法
力の大きさは、N(読み方はニュートン)という単位を用いて表現します。100gの物体が地球に引かれる力の大きさが約1Nです。
ばねばかりと呼ばれるものや、ニュートンメータと呼ばれるものを用いて測定することができます。
式での表し方
以前、2人が荷物を持つ場合を例に、力を合わせるということを考えましたが、今後、それを式で表現したい状況が出てきます。そのような時には、「この力を$\overrightarrow{F}$とする」などのように、1つ1つの力に名前を付けて表現することがあります。これは、赤いリンゴと青いリンゴがあるときに、「赤いリンゴの数を$a$、青いリンゴの数を$b$とする」のとおなじようなことです。しかし、この際、力がベクトルであることを示すために、文字の上に矢印を書いて、「 $\overrightarrow{F}$」などと表現します。
力を合わせる先ほどの例(下図)であれば、例えば、赤い力をそれぞれ$\overrightarrow{F_1}$、 $\vec{F_2}$、青で示した重力を$\overrightarrow{F_{重力}}$ 、緑で示した$\overrightarrow{F_1}$、 $\overrightarrow{F_2}$の合力を$\overrightarrow{F_{合力}}$ などと名付け、さらにその上で、「$\overrightarrow{F_1}$、 $\overrightarrow{F_2}$を合わせたものが $\overrightarrow{F_{合力}}$です」ということを、$\overrightarrow{F_1}+\overrightarrow{F_2}=\overrightarrow{F_{合力}}$のように足し算の記号を用いて表します。これは「赤いリンゴ$a$個と青いリンゴ$b$個を足したら$c$個です」ということを、$a+b=c$と表すのと同じです。違いは力がベクトルであることを示すために、文字の上に矢印を描くということだけです。

なお、リンゴの数を表す文字$a$や$b$, $c$を$x$や$y$などの別の文字で表しても良いのと同様、ベクトルに名前を付けるときも、どのような文字を使っても構いません(力は英語でForceなので、力を表すときには$F$を用いてあだ名をつけることが多いです)。
また、力がたくさんある場合には、例えば$\overrightarrow{F}$の右下に小さく添え字や説明をつけ、$\overrightarrow{F_1}$や$\overrightarrow{F_1}$、$\overrightarrow{F_{合力}}$ のように表現することもあります。
また、少し複雑ですが、ベクトル$\vec{F}$の大きさを絶対値の記号を用いて$|\vec{F}|$と表現したり、簡単に$F$と表現することもあります。ベクトルを表す文字が、ベクトルを示す矢印なしに出てきた場合には、そのベクトルの大きさを表していると考えてください。
1.3.1 図示の仕方
力を図に描くときは矢印で描きます。前述のとおり、力はベクトルであるため、足し算をするにも矢印で足すからです。このとき、図は次の3つの要素(力の3要素)が分かるように描きます。
・作用点:物体に対して力を及ぼす点がどこか?
・作用線:力の向きはどちらか?
・力の大きさ:力の大きさはどのくらいか?
※同じ原因の力が物体の各点にはたらく場合には、それらをまとめて、
中心の1点にはたらいているように表す(例 重力)。
重力は物体の重心から鉛直下向きに描く。

※図示する場合には、「1Nの力を1cmで表す」などと、あらかじめ決めておくと、
図示した力の大きさを具体的に示すことができます。

図示の仕方 その2(マス目や座標軸を用いた表現)
力を図として描けば、矢印の向きよって力の向きが示されますが、下図のように座標軸を描いて、その上に力を図示することもあります。表現方法の1つです。
座標軸を用いると、力を「上向きに2マス分、右向きに1マス分の力です。」と表現することもできます。そして、その大きさは、三平方の定理から求めることもできます。
とても便利ですので、今後、座標軸を用いて考えることが常になります。

また、(この単元で扱う多くの場合のように)一次元のみを考える場合には、向きは右か左、もしくは上か下のように2通りしかないので、下図のように座標軸を用いて考えることがあります。一次元の問題を座標軸を用いて考えると、力の向きと大きさを「$+50$N」や「$-20$N」のように符号と数で表すことができるためとても便利です。そして何よりも、このように表した一直線上の力同士であれば、力を合成するときに「$(-20)+(+50)=(+30)$」のように、今まで慣れ親しんだ足し算によって合力を求めることができるのです。

このように、表し方は様々なものがありますが、どれも便利さゆえに使われているので、ぜひ便利さを実感してみてください。
1.4.力の分類と力の種類
力には様々な種類があり、それぞれに特徴があります。例えば重力や垂直抗力といったものです。ここでは、簡単に名前とあだ名、性質を列挙しておきます。必要に応じて補足を加えていきたいと思います。
|
力の名前 |
あだ名として用いることが多い文字 |
特徴的な性質 |
遠隔力 接触力 (後述) |
|
重力 (Weight) |
W |
向きは常に鉛直下向き(もしくは地球の中心向き)。力の大きさは物体の質量mに比例する(重力をW、重力加速度をgとすると、 ) |
遠 隔 力 |
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磁石の力 |
|
S極とN極は互いに引き合い、S極同士、N極同士は互いに反発しあう |
|
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静電気力 |
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+極と-極は互いに引き合い、+極同士、-極同士は互いに反発しあう |
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張力 (Tension) |
T, S |
向きは常に糸の向き。一本の糸であれば、張力は常に等しい大きさ。 |
接 触 力 |
|
弾性力 (Elastic force) |
F |
バネから受ける力。向きはバネが自然の長さに戻る向き。力の大きさFはバネの伸びx、または縮みに比例する。比例定数をkとすると、F=kx(フックの法則) |
|
|
垂直抗力 (Normal force) |
N, R |
向きは常に面に対して垂直。(面から受ける力の面に対して垂直な成分) |
|
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摩擦力 (Friction force) |
F |
向きは常に面に対して平行。物体の動きを妨げる向きにはたらく。(面から受ける力の面に対して平行な成分) |
|
|
その他の力 |
F |
問題を解くときには「指で押す力」「物体が押す力」など、名前が付かない力も多くでてくる。これらの力のあだ名は や のように添え字を付けて呼ぶことも多い。 |
1.5.絶対に迷わない力の正しい見つけ方
力学とは、「ある物体」の動きを「その物体にはたらく力」によって明らかにしようとするものですので、「ある物体」にはたらく力を正しく見つけられなければ、その物体の運動を正しく示すことはできません。また、「ある物体」にはたらく力と「ある物体」以外の物体にはたらく力を混同してしまってもいけません。
そこで、ここでは、力を正しく、過不足なく見つけるための方法を紹介します。これは簡単な手順です。力に対する古いイメージを捨て去り、正しい手順で正確に力を見つけてください。この手順を無視して、「こんな力がある気がする」とすると、力学は絶対に理解できません。古いイメージは今すぐ捨てましょう。
まず、力は、物体に触れずにはたらく「遠隔力」と、物体に触れているときにのみはたらく「接触力」の2通りに分類できます(触れているか触れていないかの2通りなので当たり前の事しか言っていません)。
次に、触れずにはたらくことができる「遠隔力」は、高校物理では当面の間「重力」「磁力」「静電気力」しか出てきません。(電磁気学という分野を学ぶと別のが出てきますがそれまではこれだけでOKです)
力の分類
・接していなくてもはたらく遠隔力(当面は重力、磁力、静電気力のみ)
・接しているときに必ずはたらく接触力
そのため、力を見つけるときには、次のようにします。
力の見つけ方
- まずは①遠隔力(当面は重力、磁力、静電気力のみ)を見つけ、
- 次に②接触力(物体に触れているものから受ける力)を見つける。
- ただし、面と接しているときには、面から受ける力を(面と垂直な)垂直抗力と、
(面と平行な)摩擦力に分けて考える
このように考えておけば、得体のしれない力を誤って考えてしまったり、あるはずの力を見落としてしまったりすることは無いはずです。問題によっては物体同士が触れているだけで、力がはたらいていない場合や、摩擦がないという場合もありますが、それらは例外ととらえましょう。
次の例を考えてみましょう。このボールにはたらく力を描くとどのようになるでしょうか?

ボールが飛ぶ方向に力がはたらいていると考えてしまいませんでしたか?
前述の①、②を正しく用いて考えます。まず、①遠隔力は重力のみです。そして、ボールに接している物体が何もないことから、②接触力は何もない、つまり、重力の他に力ははたらいていないと理解することができます。

もし、ボールが飛んでいく方向(横方向)に力を考えてしまった人がいたら、それは古いイメージに縛られている証拠です。先の力の見つけ方を再確認し、正しく力を見つけられるようにして下さい。
1.6.力の合成、力の分解 と その方法
ベクトルである力では、小学校以来学んできた単純な足し算は通用しないということを見てきました。ここでは、ベクトルの足し算についてもう少し詳しく見てみます。
力の合成
まずは、2人でものを持つときのように、「力を合わせる」方法を学びましょう。力を合わせることを、力を合成すると言います。また、合成してできた力の事を合力(ごうりょく)と言います。
合成する3つの力が一直線上の場合は長さの足し引きをすれば良いので問題ありません。例えば右向き3Nと左向き3Nの力が合成すると、ゼロになりますし、右向き10Nの力と右向き5Nの力を合成すると、右向き15Nになります。直観的なので問題ないと思います。
一方で、合成する2つの力が一直線上にない場合には、次に紹介する方法で足し算をするしかありません。3通りの方法を紹介します。
1.6.1 合力の求め方① 図形を用いた方法(平行四辺形の法則)
1つ目の方法は、2人が荷物を持つ力を考えたときに用いた、図形から考える方法です。作図した際に平行四辺形が出てくることから、「平行四辺形の法則」と呼ばれることがあります。
求め方のまとめ:
1,力Aと力Bの始点を合わせて、力Aと力Bを2辺とする平行四辺形を描く。
2,始点から、平行四辺形の対角線を描く。
⇒この対角線が力Aと力Bの合力を表す。

1.6.2 合力の求め方② マス目を用いた方法
マス目を用いて力の大きさを示すととても便利であることはすでに述べましたが、これは、力の合成をするときにもとても役立ちます。
先ほどの上の例を、そのまま、座標の上に描いてみましょう。すると、次のことが分かります。
合力(緑)の縦方向の大きさは、赤い力の縦方向の大きさと、青い力の縦方向の大きさの和になる。同様に、合力(緑)の横方向の大きさは、赤い力の横方向の大きさと、青い力の横方向の大きさの和になる。つまり、縦と横を分けることで、それぞれ(数字の)足し算ができるようになるということです。
求め方のまとめ:
1,合力の横方向の大きさを、力Aと力Bの横方向の大きさの和から求める。
2,合力の縦方向の大きさを、力Aと力Bの縦方向の大きさの和から求める。
3,合力の大きさは、合力の縦方向の大きさと横方向の大きさから三平方の定理を用いて計算する

力の分解とその方法
1つの力を、それと同じはたらきをする2つの力に分けることを、力を分解するといいます。また、分解してできた力を分力といいます。
まずは、小学校以来学んできた普通の足し算と比較しながら、分解するという操作についてイメージを膨らませてみましょう。例えば、5+4=9 を左から右に眺めると「5と4を足すと9になる」と見ることができます。一方で、同じ式を右から左に眺めると「9は5と4に分解できる」と見ることができます。これと似た考え方をしてみましょう。力 と力 を合成して になるということを、式では と表しますが、これを右から左に眺めたときの操作「 は と に分解できる」が力の分解です。
力の分解は、合成の反対向きであるとイメージすると、分解した後の2力を合成するともとの力に戻ることが分かります。それゆえ、分解する力が対角線になるように、平行四辺形を作図すると、その2辺に、分力を見ることができます。

なお、上の例において9を5と4以外にも6と3や7と2に分解できるように、力も何通りにでも分解することができます。そのため、分解するときには、2つの分力の向きを決めて分解することが多いです。
1.6.3 合力の求め方③ 力の成分を利用した方法
力の成分
上で、分解するときには、2つの分力の向きを決めて分解することが多いと書きましたが、今後の解説の中で特に多く出てくるのが、直交するx軸、y軸を定め、その2軸の方向に分解するという操作です。
x軸やy軸のような数直線の上に分解すると、以前出てきたように、ベクトルの向きを正負の符号を用いて表せるようになります。(下の例では、赤と青のベクトルがx軸とy軸の方向に分解したときの二つの分力です。)
そして、このようにベクトルの大きさと向きを、座標を用いて表現したものを、もともとのベクトルのx成分、y成分と呼びます。(下の例では、緑のベクトルのx成分が「―2」、y成分が「+3」であるということになります)

さて、続いて2つの力を、それぞれの力の成分を用いて合成する方法を考えてみましょう。2つの力から得られた2つの力のx成分は一直線上にあるベクトル同士になるため、以前学んだように、成分同士で普通の足し算をすることで合力のx成分が分かるのです。同様にして、2つの力から得られた2つの力のy成分同士で普通の足し算をすることで合力のy成分が分かります。こうすると、普通の足し算を用いて、x成分、y成分を求めることができるようになるのです。とっても便利になります。
求め方のまとめ:
1,力Aと力Bをそれぞれx方向、y方向に分解し、それぞれのx成分、y成分を求める。
2,x成分ごと、y成分ごとを(慣れ親しんだ)足し算をして、合力のx成分、y成分を求める。
3,合力の大きさは、合力のx成分とy成分から三平方の定理を用いて計算する

いかがでしょうか?実際には、合力を求める際、もしくはもっと一般的に、力と力の関係を式で表す際には、それぞれの力を成分で表し、成分同士で式を立てることが多いです。このテキストの中でも常に出てくるので、分からなくなったらここに戻ってきてください。
練習1 次の力を点線の向きに分解せよ

練習2
下図のように,原点に$\vec{F_1}$から$\vec{F_5}$の力がはたらいている。
この5つの力の合力の大きさを求めよ。ただし、1マスの長さは1Nを表していることとする。

⇒答えは問題練習のページへ
1.7.力のつりあい
ここでは、今まで学んできた力の性質を応用し、静止している物体にはたらく力の様子について考えてみます。
1.7.1 力のつりあいとは?
運動会で行う綱引きをイメージしていただければよいと思いますが、両チームが同じ力で引き合っているとき、綱はどちらにも動きません。静止しています。物理では、このように同じ力で引き合っているときに、「力がつりあっている」と表現します。
例えば、何度も出てきている下の図を例に説明すると、左図「$\overrightarrow{F_1}$という力と$\overrightarrow{F_{重力}}$という力はつりあっている」と言えますし、右図では「$\overrightarrow{F_{合力}}$という力と$\overrightarrow{F_{重力}}$という力はつりあっている」、もしくは「$\overrightarrow{F_{1}}$と$\overrightarrow{F_{2}}$の合力は$\overrightarrow{F_{重力}}$とつりあっている」などということができます($\overrightarrow{F_{1}}$と$\overrightarrow{F_{2}}$の合力が$\overrightarrow{F_{合力}}$なので)。
静止している場合には、力がつりあっている。これをもう少し深めていきましょう。

1.7.2 力のつりあいの式とは?
力がつりあっているという状況を式で表そうとすると、どのように表せばよいでしょうか?手掛かりとして、またまた上の右図の状況を考えましょう。 $\overrightarrow{F_{合力}}$と$\overrightarrow{F_{重力}}$という、つりあっている二つの力を合わせるとどうなるでしょうか?答えは「ゼロ」になります。
実は、この状況からもわかるように、「力がつりあっている」状態とは、すべての力を合わせた(合成した)ときに、「ゼロ」になっている状態の事なのです。
上の例を式で表すと次のようになります。
「$\overrightarrow{F_{合力}}$という力と$\overrightarrow{F_{重力}}$という力はつりあっている」 ⇒ $\overrightarrow{F_{重力}}+\overrightarrow{F_{重力}}=\overrightarrow{0}$
「$\overrightarrow{F_{1}}$と$\overrightarrow{F_{2}}$の合力は$\overrightarrow{F_{重力}}$とつりあっている」 ⇒ $\overrightarrow{F_{1}}+\overrightarrow{F_{2}}+\overrightarrow{F_{重力}}=\overrightarrow{0}$
上の例から離れて、一般的な話にすると、こうなります。
物体が静止しているとき、物体にはたらく力はつりあっている。
物体にはたらく力を$\overrightarrow{F_{1}}$、$\overrightarrow{F_{2}}$ 、$\overrightarrow{F_{3}}$・・・とし、式に表すと次のようになります。
力のつりあいの式:
$\overrightarrow{F_{1}}+\overrightarrow{F_{2}}+\overrightarrow{F_{3}}+・・・=\overrightarrow{0}$
この式を「つりあいの式」と呼びます。
この式は、物体にはたらくすべての力の合力をもとめるとゼロになるということを表しています。物体が動かないのは、そもそも力がはたらいていないときか、もしくははたらいていても合力がゼロになっているときであるということになります。直観ともあっていて、理解しやすいのではないでしょうか?
ここからは、これを応用して、問題を解決していきたいと思います。
理科の議論の流れ・思考の流れ
理科の議論は、「様々な現象」から始まり、結局どういうことかという「原理」を突き止めるという議論と、その「原理」をもとに、その原理を応用して「様々な問題を解決する」「様々な現象を説明する」という議論の2通りあります。ここまでは荷物を持っている状況という具体的な現象から、「つりあいの式」という一般的な状況を導いてきましたので、前者の議論です。一方、ここからはつりあいの式を応用して問題を解決するという後者の議論に入っていきます。議論の大きな流れが意識できると分かりやすいと思うので、意識してみてください。
難しい言葉では前者を「帰納的」な議論、後者を「演繹的」な議論といいます。この言葉を使いこなしているとカッコいいと思うので、気になった人は調べてみてください。
1.8.力のつりあいの問題を解いてみる
力のつりあいの問題を解いていきましょう。
基本的には、物体が静止している場合に、ある力(例えば指が押している力)の大きさを求めましょうという問題が出題されます。
今まで学んできた、力の見つけ方や座標の取り方、力の分解、さらには作用反作用の法則といったことも活用していきますので、もし分からなくなってしまったら以前の学習を見返してみてください。
実は、力のつりあいの問題の解き方は基本的にはとてもシンプルです。力学自体が「ある物体の動きは、その物体にはたらく力によって決まる」というシンプルなことを主張しているので、解き方もシンプルなのです。次の①~⑤に従えば大丈夫です。練習を重ねて、きちんとした解き方を理解してください。
力のつりあいの問題の解き方
①着目する物体を決める
(どの物体の動きが見たいのかを明確に決める必要があります)
②着目している物体にはたらく力を見つける
(力を見つける際には、「遠隔力」と「接触力」に分けて、それぞれ探します)
③力を図示し、座標軸を定めて、それぞれの力の成分を求める
(慣れ親しんだ足し算で計算式を表したいので、それぞれの力を成分に分けます)
④式を立てる
(力のつりあいの式を立てます)
⑤式を解く
(数学の力を借りて式を解き、答えを求めます)
ここからは、具体的な問題を解きながら、上の手順を確認していきます。まずは物体が一つの場合を考え、次に物体が二つの場合を考えます。問題を解くことができたかではなく、上の手順を納得して活用できたかという点に注意を向けて進んでいきましょう。
1.8.1.物体が1つのとき(問題演習)
問1
図のように、天井からつるされた5Nのおもりが下の方に3Nの力で引っ張られた状態で静止している。おもりの上側の糸の張力はいくらか?

解説
これは何となく考えただけでも8Nと答えが出ると思います。しかし、ここでは式をどのように立てるべきかを考えてみましょう。
力学の問題では必ず、着目する物体を決め、その物体にはたらく力を正しく見つけ、正しく図示することから始まります。そして、座標軸を定め、式を立てるのです。どんな難しい問題もこの流れは変わりません。
この問題も、そのプロセスを練習しましょう。
①着目する物体を決める
まず、着目する物体を決めます。今回の問題では、おもりが静止しているとあるので、おもりにはたらく力のつりあいを考えます。着目する物体は「おもり」です。
②着目している物体にはたらく力を見つける
つづいて、この着目している物体「おもり」にはたらく力を見つけます。力を見つける際には、「遠隔力」と「接触力」に分けて、それぞれ探します。遠隔力は、離れてはたらく力で、今のところ、「重力」「静電気力」「磁力」のみだと考えましょう。この問題では「重力」だけを考えればOKです。続いて「接触力」は、触れている物体があれば必ず力がはたらいていると思いましょう。(たまに触れているだけで力がはたらかないこともありますが、それは例外だと思いましょう。)この問題では、物体には上側に1本、下側に1本の糸がありますので、その2カ所で力を受けています。
③力を図示し、座標軸を定めて、それぞれの力の成分を求める
図示すると次のようになります。そして、この図を見ながら、座標軸を定め、成分を求めます。今回は、全ての力が一直線上にあるので、(上下のどちらの向きを正の向きとしてもかまいませんが)上向きを正とする1本の数直線の上に全てベクトルを表すことができます。すると、重力が下向きに-5N、張力が下向きに-3Nと表すことができます(下向きなので符号がマイナスとなっている点に注意)。
④式を立てる
③の成分を見ながら、未知数である張力S(>0)を用いて式を立てると次のようになります。
(+S)+(-5)+(-3)=0
⑤式を解く
上の簡単な式を解くとS=+8、つまり上向きに8Nであるとわかるのです。

座標軸っていつも必要?
今回の問題は、座標軸を定めても、定めなくても簡単に解けたかもしれませんが、
今後物理を学んでいくと、座標軸を定めて考えないと、頭の中がこんがらがってしまうような問題とたくさん出会います。一方で、座標軸を定めたがゆえに解けなくなる問題はありません。ですので、常に座標軸を定めて考えることをお薦めします。この解説でも常に座標軸を定めて解く方法を紹介していこうと思いますので、ぜひ使い慣れて、便利さを実感していただきたいです。
1.8.2.物体が1つのとき (2次元)(問題演習)
水平面より30°傾いているなめらかな斜面上に質量$m$〔kg〕の物体をのせ,斜面下方から、斜面に沿って(図の矢印の向きに)$F$〔N〕の力を加えて静止させた。重力、垂直抗力の大きさを指で支える力の大きさFを用いて表しなさい。ただし、重力加速度の大きさを$g$〔m/s2〕とし、摩擦力は無視できるものとする。

<解説>
①着目する物体を決める
まず、着目する物体を決めます。今回の問題では、物体が静止しているとあるので、物体にはたらく力のつりあいを考えます。着目する物体は「物体」です。
②着目している物体にはたらく力を見つける
つづいて、この着目している物体「物体」にはたらく力を見つけます。力を見つける際には、「遠隔力」と「接触力」に分けて、それぞれ探します。本問では遠隔力は「重力」があります。また、「接触力」は、床と指に触れているので、それぞれから力を受けます。「床」などの面から受ける力は、面に対して垂直な「垂直抗力」と面に対して平行な「摩擦力」がありますが、今回は「摩擦力は無視できる」とありますので、無視しましょう。
③力を図示し、座標軸を定めて、それぞれの力の成分を求める
図示すると次のようになります。重力を$\overrightarrow{W}$、垂直抗力を$\overrightarrow{N}$と名付けましょう。
なお、「力を描け」と言われたときには、作用点がどこかを意識する必要がありますが、力を描く問題以外では、下の図のように、すべての力が物体の真ん中にはたらいているように描くことがあります。これは、力のつりあいの問題では、物体が回転したり、向きを変えることを考えていない(無視している)ためです。回転や向きの変化を考えるときには、力が物体のどこにはたらいているのかが大切になってきますが、詳しくは「剛体の運動」という単元で学びます。

さらに、この図を見ながら、座標軸を定め、成分を求めます。今回は、図のように水平方向右向きに$x$軸、鉛直方向上向きに$y$軸という座標軸を定めましょう。座標軸の向きに、力を分解すると、それぞれの力の成分が見えてきます。このとき、垂直抗力$\overrightarrow{N}$と$y$軸の間の角度が30°、垂直抗力$\overrightarrow{N}$と$x$軸の間の角度が60°になることが幾何学的にわかるので、それを利用しています。
すると重力 、垂直抗力 、指が押す力 の成分はそれぞれ次のように求まります。
( $\overrightarrow{F}$、$\overrightarrow{N}$、$\overrightarrow{W}$の大きさをそれぞれ、$F$、$N$、$W$ と表します。)
重力$\overrightarrow{W}$の$x$成分:$W_x=0$
重力$\overrightarrow{W}$の$y$成分:$W_y=-W$
垂直抗力$\overrightarrow{N}$の$x$成分:$N_x=-\frac{1}{2}N$
垂直抗力$\overrightarrow{N}$の$y$成分:$N_y=\frac{\sqrt{3}}{2}N$
指が押す力$\overrightarrow{F}$の$x$成分:$F_x=\frac{\sqrt{3}}{2}F$
指が押す力$\overrightarrow{F}$の$y$成分:$F_y=\frac{1}{2}F$

④式を立てる
成分を用いて力のつりあいの式を立てます。$x$座標の方向、$y$座標の方向ごとに考えると次のようなつりあいの式が立てられます。
$x$方向: $W_x+N_x+F_x=0+(-\frac{1}{2}N)+(+\frac{\sqrt{3}}{2}F)=0$・・・(i)
$y$方向: $W_y+N_y+F_y=(-W)+(+\frac{\sqrt{3}}{2}N)+(+\frac{1}{2}F)=0$ ・・・(ii)
⑤式を解く
この式(i), (ii)を連立して解くことで、それぞれの力の大きさは次のように表せます。
$N=\sqrt{3}F$
$W=2F$
なお、座標の向きは、何度も言うように自分で決めて良いものです(自然には、決まった座標などありません)。
今回の問題において、次のように斜面方向に$x$軸、それと垂直な方向に$y$軸という座標軸を定めたらどうなるのか、考えてみるのはとても意味のあることです。
この座標の中でそれぞれの力の成分を求めると次のようになります。

重力$\overrightarrow{W}$の$x$成分:$W_x=-\frac{1}{2}W$
重力$\overrightarrow{W}$の$y$成分:$W_y=-\frac{\sqrt{3}}{2}W$
垂直抗力$\overrightarrow{N}$の$x$成分:$N_x=0$
垂直抗力$\overrightarrow{N}$の$y$成分:$N_y=N$
指が押す力$\overrightarrow{F}$の$x$成分:$F_x=F$
指が押す力$\overrightarrow{F}$の$y$成分:$F_y=0$
ここから、$x$軸方向、$y$軸方向の式はそれぞれ次のようになります。
$x$方向: $W_x+N_x+F_x=(-\frac{1}{2}W)+0+(+F)=0$・・・(i)
$y$方向: $W_y+N_y+F_y=(-\frac{\sqrt{3}}{2}W)+(+N)+0=0$ ・・・(ii)
この場合、先ほどの軸の定め方よりも少しだけ楽に見えるかもしれません。実は、座標の取り方は自由ですが、場合によっては、楽になる座標の取り方や大変になる取り方があります。どのように座標を定めると楽になりそうかは、問題を解き始めるときに、考えると良いと思います。このようなメタな思考(“問題を解く”だけではない “問題をいかに解くか”という思考)が物理の理解を深めます。
なお、座標軸の向きが変わると、上式における符号が全て反転することになり、結局両辺に「-1」を掛けただけで同じ式になることも意識しておきましょう。くどいですが、座標の定め方は自由なのです。
1.8.3.物体が2つのとき (2次元)(問題演習)
ここでは2つの物体を考えましょう。動きを考えたい物体が2つ以上あるときには、”相互作用”が顔を出します。物体が2つ以上あるときには、作用反作用の法則、忘れないようにしてください!
問
図のように、水平面と30°の角をなす滑らかな斜面を持つ質量Mの台Aが水平面に乗っている。その台の上に質量mの球状の物体Bが乗っている。Bの側面は図のように鉛直な滑らかな壁に接している。このとき、次の問に答えよ。ただし、重力加速度の大きさをgとする。
①球が壁を押す力の大きさを求めよ
②台と床の間の静止摩擦力の大きさを求めよ

物体が二つになると、一気に難易度が高まりますが、心配することはありません。力学はあくまでも、「ある物体の動きは、その物体にはたらく力によって決まる」と言っていますので、結局は一つ一つの物体に対して、今までやってきたことをするしかないのです。そのため、物体が二つ以上あるときには、めんどくさいようでも、着目する物体毎に図を改めて描き、それぞれの図を用いながら前述の手順①~⑤を行いましょう。
それでは始めます。
①着目する物体を決める
まず、着目する物体を決めます。今回は物体が2つあるので、2つの物体に着目します。そして、めんどうでも、それぞれについて図を描きますます。
②着目している物体にはたらく力を見つける
つづいて、この着目しているそれぞれの物体にはたらく力を見つけます。
球Bには、遠隔力である重力と、球と接している壁と台Aから力を受けます。壁と台Aはどちらも面なので、垂直抗力と摩擦力をそれぞれ考える必要がありますが、壁も台Aの斜面も滑らかなので、それぞれとの間の摩擦力は無視します。
球に働く重力を$\overrightarrow{W_1}$、壁からの垂直抗力を$\overrightarrow{N_1}$、台Aからの垂直抗力を$\overrightarrow{N_2}$と名付けましょう。(力が多いので右下に添え字をつけています)
台Aには、遠隔力である重力と、台Aと接している床と球から力を受けます。床は面なので、垂直抗力と摩擦力をそれぞれ考える必要がありますが、台Aの斜面は滑らかなので、球との間の摩擦力は無視します。(床との摩擦力は無視できないので考えます)
台Aに働く重力を$\overrightarrow{W}$、床からの垂直抗力を$\overrightarrow{N_3}$、床との間の摩擦力を$\overrightarrow{f}$、球Bからの力を$\overrightarrow{N_4}$、と名付けましょう。(力が多いので右下に添え字をつけています)
図のようになります。
(図中では、力の大きさを $W_1$、$N_2$ 、$N_2$ 、$W_2$ 、$N_3$ 、$f$ 、$N_4$ で表しています)

③力を図示し、座標軸を定めて、それぞれの力の成分を求める
座標軸を定め、②で見つけた力の成分をそれぞれ求めます。今回は、図のように座標軸を定めましょう。座標軸の向きに、力を分解すると、それぞれの力の成分が見えてきます。
例えば小球が壁から受ける垂直抗力$\overrightarrow{N_1}$の$x$成分は、正の向きなので$(+N_1)$、摩擦力$\overrightarrow{f}$の$x$成分は、負の向きなので$(-f)$となります。他の力に関しても、下の図を見ながら成分を確認しましょう。

④式を立てる
③で求めた成分を用いて、物体毎に$x$軸方向、$y$軸方向のそれぞれでつりあいの式を立てます。
球Bの$x$方向: $(+N_1)+(-\frac{1}{2}N_2)=0$・・・(i)
球Bの$y$方向: $(+mg)+(+\frac{\sqrt{3}}{2}N_2)=0$・・・(ii)
台Aの$x$方向: $(+N_4)+(-f)=0$・・・(iii)
台Aの$y$方向: $(-mg)+(-\frac{\sqrt{3}}{2}N_4)+(+N_3)=0$・・・(iv)
⑤式を解く
これら式(i)~(iv)を連立することで解きます。文字が多くなったので、式の数と、未知数の数を確認してみましょう。
式の数は4つです(つまり未知数が4つまでなら解けそうです)。一方で未知数は$N_1 、N_2 、N_3 、N_4 、f $の5つです。(質量m、Mは問題文中に与えられていますので知っている値と思いましょう)
これでは、連立方程式を解くことができません。
ここで大切なことに気が付く必要があります。この問題は物体が二つあるということです。物体が二つある問題では、作用反作用の法則が顔を出します。この問題では、球が台Aからの垂直抗力$\overrightarrow{N_2}$と、台Aが球から受ける力$\overrightarrow{N_4}$は、お互いに押し合う力ですので、作用と反作用の関係にあると言えるのです。そのため、作用反作用の法則より、実は$\overrightarrow{N_2}$と$\overrightarrow{N_4}$が同じ大きさになることが分かるのです。
これより、未知数は4つであると考えることができるようになり、連立方程式を解けるようになります。
連立方程式を解くと、それぞれ次のように求まります。
$N_1=\frac{1}{\sqrt{3} }mg、N_2= \frac{2}{\sqrt{3}}mg、N_3=mg+Mg 、N_4=\frac{2}{\sqrt{3}}mg 、f=\frac{2}{\sqrt{3}}mg$
いかがでしょうか?物体が二つになったら、二つ図を書いてそれぞれ力について考える。そのように対応してください。くどいですが、「その物体の動きは、その物体にはたらく力によって決まる」からです。