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7.演習問題

 

 熱力学、特に熱機関(熱サイクル)の問題では、たくさんの物理量が登場し、さらには物理量同士の関係式もたくさん登場する(ボイル、シャルル、状態方程式、熱力学第一法則、モル比熱など)。そのため、実際に問題を見てみても様々な問われ方をして、様々な解き方がある。

 しかし、整理して問題を眺めてみると、結局どの問題も似たようなことを聞かれていることが多い。

 それゆえ、どのような問題でも対応しやすいように、あらかじめ熱機関の情報を$pV$グラフと前述の表の形にまとめてしまうことが得策であることが多い。(慣れてしまえば情報をまとめる時間はさほどかからず、問題の答えはまとめた情報の中にあることが多い。逆にこのルーティーン化を行わないと、”解き方”の多様さゆえ、熱力学がつかみどころのないもののように感じられてしまうと思われる。)

 そこでここでは、まずは今まで学んできたことのポイントをまとめ、その後、熱機関(熱サイクル)の問題を解く際の手順をルーティーン化をしてみたい。

 

 

 

練習問題1 気体の状態変化と熱効率(東京理科大(改))

 単原子分子の理想気体の状態を図に示すようなA→B→C→Aの経路に沿って、ゆっくり変化させた。B→Cは等温変化である。

 




(1)この過程について、次の表に分かる範囲で情報をまとめよ。また、状態Aにおける温度を$T$として、状態A、B、Cにおける温度を$pV$グラフ中に書き込め。

 

A⇒B(   変化)

B⇒C(   変化)

C⇒A(   変化)

一定になるもの

 

 

 

した仕事

 

 

 

得た熱量

 

 

 

 

 

 

(2)次の各問いに答えよ。

(a) A→Bの過程における気体の内部エネルギーの変化は  (1)  〔J〕である。

 

 

(b) B→Cの過程において気体が吸収した熱量が$Q$〔J〕であるとすると、気体の内部エネルギーの変化は  (2)  〔J〕であり、気体が外部にした仕事は、  (3)  〔J〕である。

 

 

(c) C→Aの過程で気体が受けた仕事は、  (4)  〔J〕である。

 

 

(d) A→B→C→Aの1サイクルで気体がした正味の仕事は  (5)  〔J〕であり、このサイクルの熱効率は、  (6)  である。

 

 

(3)本問が理想気体の2原子分子であるとすると、(d)の答えはどのように変わるか答えよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

練習問題2 気体の状態変化と熱効率 断熱変化(愛知教育大学2012(改))

 1モルの単原子分子の理想気体が温度$T_0$〔K〕、体積$V_0$〔m3〕、圧力$p_0$〔Pa〕の状態Aにある。図のように、気体の状態がA→B→C→Aの順に変化する過程を考える。過程A→Bは状態Aから気体の体積を一定に保って圧力$3p_0$の状態Bへ変化する過程である。過程B→Cは状態Bから体積$V_c$〔m3〕、圧力$p_0$の状態Cへの断熱変化の過程である。この過程では、気体に出入りする熱量はなく$pV^{5/3}=一定$という関係が成り立つ。過程C→Aは圧力を一定に保って状態Cから状態Aへ変化する過程である。気体定数を$R$〔J/(mol・K)〕とし、過程A→Bにおいて、気体が得る熱量を$Q_{AB}=3RT_0$〔J〕として、各問いに答えよ。ただし、$3^{3/5}=1.93$とする。



(1)この過程について、次の表に情報を分かる範囲でまとめよ。また、各状態A、B、Cにおける温度を$pV$グラフ中に書き込め。

 

A⇒B(     変化)

B⇒C(     変化)

C⇒A(     変化)

一定になるもの

 

 

 

した仕事

 

 

 

得た熱量

 

 

 

 

 

 

 

(2)次の各問いに答えよ。

(a) 3つの過程A→B、B→C、C→Aのうち、気体の温度が上昇する過程を全て答えよ。

 

 

(b) 過程A→Bにおいて、気体の内部エネルギーの変化量$\Delta U_{AB}$〔J〕を$R$と$T_0$を用いて表せ。

 

 

 

(c) 状態Cの体積$V_c$を$V_0$を用いて表せ。

 

 

 

(d) 過程B→Cにおいて、体積$V$〔m3〕の状態における気体の温度$T$〔K〕を$V$、$T_0$、$V_0$を用いて表せ。

 

 

 

(e) 過程C→Aにおいて、気体が失う熱量$Q_{CA}$〔J〕を$R$と$T_0$を用いて表せ。

 

 

 

(f) 過程A→B→C→Aの1サイクルにおける熱効率$e=W/Q_{AB}$を計算せよ。ここで$W$〔J〕は1サイクルの間に気体が外部にする仕事である。                             

 

 

 

 

 

 

 

練習問題 4 気体の状態変化と熱効率

 熱機関を利用して上昇、下降するエレベータの熱効率を求めよう。図1のように大気中で鉛直に立てられている底面積$S$〔m2〕の円柱形のシリンダーに質量が無視でき、なめらかに動くピストンがついており、中に単原子分子理想気体が封じこめられている。図1のようにピストンの可動範囲は$h_0$〔m〕から$2h_0$〔m〕までである。重力加速度の大きさを$g$〔m/s2〕とする。

 最初、気体の温度が外部の温度と同じ$T_0$〔K〕、気体の圧力$p$が大気圧と同じ$p_0$〔Pa〕、ピストンの高さが$h_0$〔m〕である。このときの状態を状態Aと呼ぶ。

ピストンの上に質量$M$〔kg〕の物体を乗せた。このとき、ピストンは容器の上側に引っ掛かり、ピストンの高さは$h_0$〔m〕のままである。

 シリンダー内の気体に熱を与える。しばらく静止し続けた後、ピストンが動きだした。この動きだしたときの状態を状態Bとよぶ。

 さらに熱し続けるとゆっくりとピストンは上昇し、高さが$2h_0$〔m〕に達した。このときの状態を状態Cとよぶ。

状態Cになった瞬間に物体をピストンから降ろすとともに熱を与えるのをやめた。ピストンはしばらく静止し続けたが、やがてゆっくりと下降しはじめた。 この下降を始めたときの状態を状態Dと呼ぶ。

 下降したピストンは$h_0$〔m〕となったところで静止し、このとき温度は最初の状態Aと同じく$T_0$〔K〕になった。このようにして、この熱機関はサイクルをなす。

                               〔12弘前大(改)〕

 

 (2)次の各問いに答えよ。

(a) 状態Bのシリンダー内の気体の温度を求めよ。

 

 

 

(b) 状態Aから状態Bまでに気体に与えられた熱量を求めよ。

 

 

 

(c) 状態Cのシリンダー内の気体の温度を求めよ。

 

 

 

(d) 状態Bから状態Cまでに気体に与えられた熱量を求めよ。

 

 

(e) 気体の体積を$V$とするとき、このサイクルの$pV$図を図2にかけ。

 

 

 

 

(f) このサイクルで熱機関が外にした(正味の)仕事を求めよ。

 

 

 

(g) このサイクルの熱効率を求めよ。

 

 

 

(h) $M=\frac{P_0 S}{g}$の場合の熱効率の値を求めよ。