【独習】ゼロから 一歩ずつ 物理の見方・考え方 Home

2.電荷と電場-2 場とは?

■ポイント1 場とは何か?

1.1     場とは

 ニュートンは、物体どうしの間には物体の質量に比例し、互いの距離の2乗に反比例する大きさの力がはたらくこと(万有引力の法則)を示しました。 

 しかし、ニュートンは、触れ合っていない物体どうしが力を及ぼしあう原理は説明していません。では、物体の間の力はどのように伝わるのでしょうか。物体が生じたら、その瞬間に遠く離れた星も引力を感じるのでしょうか。

重力場のゆがみ http://webio.kohgakusha.co.jp/archives/7079

質量を持つものの周りに重力場ができる

質量をもつものだけが歪み(場)によって力を受ける

 今は、力がはたらく理由は、「場」という空間の歪みであると考えられています。歪んだ空間の中に物体があると、物体は力を受けるのです。しかし不思議なことに、電気的な場の歪み(電場)や磁気的な場の歪み(磁場)がある場合には電荷や磁荷を持ったものだけが、重力場の歪みがある場合には質量を持ったものだけが力を受けるのです。

1.1.1      電場

1.1.1.1      クーロンの法則

クーロンは1785年クーロンの法則を発見しました。

$$F=k \frac{q_1 q_2}{r^2}$$

 

万有引力の法則と良く似た形の法則です。

$$F=G \frac{m_1 m_2}{r^2}$$

1.1.1.2      電場とは

クーロンの法則を現在の「場」の理解から解釈すると、$q_2$〔C〕という電荷が電気的な場の歪みよって力$\vec{F}$ 〔N〕を感じているということになります。この電気的な場の歪みのことを電場$\vec{E}$〔N/C〕といいます。 電荷が場によって受ける力を式で表すと次のように表すことができます。

 $$\vec{F}=q_2 \vec{E}$$

 そこで、$q_1$が作る場の強さと向きを、「+1Cの試験電荷が感じる力の大きさと向き」と定義することにしました。

 つまり、このときの電場は、クーロンの法則と見比べると、 $E=k \frac{q_1}{r^2}$

 となることがわかります。

 →「+1Cの試験電荷が感じる力の大きさと向き」なのだから各点における電場はベクトル量になります。電場のような各点の場がベクトル量で表される場をベクトル場といいます。

【図1】3次元空間の中にある点電荷を2次元で表した図

 

電場はベクトルなので、二つ電荷があった場合には、ベクトルの足し算になる。



 

1.1.1.3      ベクトル場の身近な例

 上の図を見ていると、これは、お風呂の栓を抜いて上から眺めているときの図と似ていることに気が付くと思います。水の流れも各点、各点において速度(←向きと大きさを持つ)を持つのでベクトル場です。また、天気予報で見る風速予報の図もベクトル場です。

①1点から湧き出した水の流れ【図2】

 

図はPhET simulationを用いて作成


図 円形分水 http://blog.kyushu-heritage.jp/?eid=286318




②1点から湧き出し、1点に吸い込まれる水の流れ【図3】

 

 

図はPhET simulationを用いて作成

 


図 シンクに流れる水 https://mk-clean.com/kitchen/trouble-kitchen/sink-clogged/

③1本の線から湧き出した・1本の線に吸い込まれる水の流れ【図4】

 

 

図はPhET simulationを用いて作成

 


階段式分水 https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g298153-d12684175-Reviews-Okusawa_Watersource_Staircase_Spillway_Channel-Otaru_Hokkaido.html#/media-atf/12684175/268969444:p/?albumid=-160&type=0&category=-160



 

1.1.2      電気力線

電場内に引いた線で、その接線が電場ベクトルEの方向を表す、そのような線を電気力線という。

1.1.2.1      電気力線の特徴

①  電気力線は正の電荷から出て負の電荷に入るか,正の電荷から出て無限遠にいくか,無限遠からきて負の電荷に入るかのいずれかで,途中で切れたり新しく生まれたりすることはない。

②  電気力線の各点において電気力線の向きに引いた接線は,定義からその点での電場の向きになる。

③  電場の向きは各点で定まっているので,電気力線は交差したり枝わかれしたりしない。

④  電気力線の密度が大きいところは電場が強く,小さいところは電場が弱い。

 

逆2乗の法則



光の強さを、光があったっている面における単位面積当たりの光線の数であると考えてみると上の説明は理解しやすいはず。

ある点電荷から離れたところにある別の点電荷が受ける力の大きさは、その場所にある電気力線の単位面積当たりの数であると考えられる。上の光の例と対比させて考えると、逆二乗則になることが納得されよう。

 

 

1.1.2.2      電気力線の密度と電場の強さの関係

電荷があったときに描く電気力線の様子は、場の流れの様子を表しているに過ぎない。そのため、何本の線で表そうと問題はないはずである。しかし、電気力線の密度と電場の強さには関係があるので、これらを次のように定量的に結び付けておくと便利になることがある。

電場の強さが$E$〔N/C〕の場所の電気力線の密度を$E$〔本/m2〕と定める。

(自然からの要請では全くないが、便利なので、物理ではこれを約束事としている。)

 

例)

$Q$〔C〕の点電荷があるとき、1m離れたところの電場の強さ$E$は$E=k_0 \frac{Q}{r^2}=k_0 Q$である。

そのため、単位面積当たり$k_0 Q$本になるように電気力線を描くことになる。

 

(のちの議論のために)半径1mの球を考えると、この球の表面積は$4\pi$であるため、この球の表面を貫く電気力線の数は$4\pi k_0 Q$本となる。

 

1.1.2.3      ガウスの法則

前述の写真のような湧き水があり、この湧き水の1秒あたりの水の噴出量が5リットルであったとする。この場合、(写真における)下段へと流れ落ちる水の量は、噴出量と同じく1秒あたり5リットルであると考えられる。湧き出しているところの形が円でなく正三角形であったとしても、下段へと流れ落ちる水の量は、1秒あたり5リットルとなるはずである。

電気力線が正電荷から湧き出し、負電荷に吸い込まれていくというイメージをもとに、湧き水と同様の考え方を用いると次のことが言える。これをガウスの法則という。

 

ガウスの法則

一般に,任意の閉じた曲面(閉曲面)を貫いて外に出る電気力線の数は,

曲面の内部に含まれる電荷の全電気量$Q$で決まり,$4\pi k_0 Q$〔本〕である。

 

1.1.3      電位



【図3】を見ると、極板Aから極板Bに移動する+1Cの試験電荷を考えます。試験電荷は常に電場から力を受けるので、電場から仕事をされています。逆に極板Bから極板Aに行くときには、電場から仕事をされます。そして、極板Aから極板Bに移動するまでにされる仕事の大きさは、経路によりません。この様子は重力場の中を移動する物体の位置エネルギーと同じです。つまり、重力場の中で位置エネルギーを考えたように、電場がある場合には位置エネルギーを考えることができます。極板Bの方が極板Aよりも位置エネルギーが高いのです。この電気的なエネルギーの高さのことを電位と呼びます。

 

1.1.3.1      電位

$q$〔C〕の電荷が静電気力による位置エネルギー$U$〔J〕を持つとき、

 その点の電位$V$〔V〕は$V=U/q$〔V〕  →よって〔V〕=〔J〕/〔C〕

  c.f. 万有引力による位置エネルギー

 

1.1.3.2      電位差

 電位差がV〔V〕の2点間を、低電位のほうへ電荷q〔C〕が移動するときに、

静電気力がする仕事W〔J〕はW=qV

 図4のような一様電場を考える。AB間の一様な電場をE〔N/C〕、AB間の距離をl〔m〕、極板A、B間の電位差をV〔V〕とすると、E×l=Vとなり、EV/l

  →よって〔N/C〕=〔V〕/〔m〕

 

⇒+1Cの試験電荷を置くと電位が高いところから低いところに“落ちて”いく。

  高さのことを電位。傾きのことを電場。

 逆に負電荷を置くと電位が低いところから高いところに”落ちて”いく。

 

 

1.1.4      演習問題

1.1.4.1      練習問題1【電気力線】 

 図のように紙面上の+と書かれている場所に正の点電荷が、-と書かれている場所に負の点電荷が置かれている。これらの電気量の大きさは等しい。図において細い線は一定の電位差で描かれている等電位線を表している。なお、点電荷の付近(点線内)では等電位線の間隔が密になってしまうので図示していない。この紙面上で正電荷をA→B→C→D→E→F→G→H→Iの順にゆっくりと移動させた。このとき以下の問いに答えよ。

  • 電気力に逆らって外力がする仕事が正で、その大きさが一番大きい区間を求めよ。
  • 電気力に逆らって外力がする仕事が負となる区間を求めよ。
  • 電気力に逆らって外力がする仕事がゼロとなる区間を求めよ。
  • E点を通過する電気力線を描け。電気力線には方向を示す矢印をつけよ。

 

1.1.4.2      練習問題2【電位のグラフと荷電粒子】

 x軸上を正電荷をもつイオンが運動してきて、原点Oを5.0×105m/sの速さで、正の向きに通過した。このイオンはその後、x軸上を運動し続けて、A(OA=0.050m)、B(OB=0.10m)、C(OC=0.20m)を通過した。このイオンの電荷は1.6×10-19Cで、質量は2.0×10-28kgである。x軸上の各点の電位Vは次のグラフで表される。以下の問いに答えよ。

(1) OからCまでの電場Eを縦軸にとってExの関係を示すグラフを描け。ただし、x軸正の向きの電場を正とする。

(2) このイオンの静電気力による位置エネルギーUを縦軸にとってUxの関係を示すグラフを描け。

(3) OA間で粒子が受ける力の大きさと向きを求めよ。

(4) BC間で粒子が受ける力の大きさと向きを求めよ。

(5) 粒子がAを通過するときの速さを求めよ。

 

 

 

1.1.4.3      練習問題3【点電荷が作る電場と電位】

 

 図のように、x軸上においてx=-aの点Aに電気量が4QQ>0)の点電荷xaの点Bに電気量が-Qの点電荷を固定しておく。クーロンの法則の比例定数をkとして、以下の問に答えよ。

(1) 原点Oにおける電場の強さと向きを求めよ。

(2) 座標(0, a)の点Cにおける電場の強さを求めよ。

(3) 電場が0である点の座標(x, y)を求めよ。ただし、無限遠点は除く。

(4) 無限遠方を基準として、次の各点での電位を求めよ。なお、点Dの座標は(-a/2, 0)である。 (イ) 点O  (ロ) 点C  (ハ) 点D

(5) x軸上で電位が0である点の座標を求めよ。ただし、無限遠点は除く。

(6) 電位が0である点はx軸上以外にあるか。あればそれらすべて求めよ。ただしx-y平面上のみ考えるとする。

 

 質量mの小球Pに電気量がqの正電荷を帯びさせ、外力を加えて点Oから点Cを経て点Dまでゆっくりと移動させ、点Dで静かに放す。(点D(-a/2, 0)は図示されていない)

(7) Pを点Oから点Dに移す間に外力がした仕事はいくらか。またこの間に静電気力がした仕事はいくらくか。

(8) 点Dから動き始めたPが点Oを通るときの速さを求めよ。

 

1.2     導体中の電場

 (平衡状態では)導体内は等電位になっている。 

 ・平衡状態では導体内部に電場はなく、導体全体は等電位になる

 ・電気力線は導体表面に垂直である。 

 

 

 ※真空中に電場があるときに、導体表面に電荷が誘起されているということに注意。

 

1.2.1      接地(アース)

 右図のように、接地(アース)をした場合、

地表の電位は0なので、接地した導体も電位が0になる。

⇒「直流回路」の範囲で重要になります。

図 接地 日本地工株式会社HPより https://www.chiko.co.jp/setti/faq/002-1.html





 

 

 

 

 

 

1.3     静電気と電流の違い

 帯電したバンデグラフに蛍光灯を近づけるとどうなるか。また、理由はなぜか。

 

1.3.1      静電気と電流の違い、電源とは何をするものか?

  電荷の移動がない電気が静電気。電荷が移動すると電流という。いずれも荷電粒子が電気の担い手であることには変わらない。

 一方で、電流を流し続けるには常に電位差を作る必要がある。家庭用電源をはじめ、電池などは常に電位差を一定に保つはたらきをしてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

考えてみよう

 バンデグラフ(静電気発生装置)にアルミ皿を数枚重ねておく。バンデグラフのスイッチを入れるとアルミ皿はどうなるか。またそれはなぜか。

 

(1) 金属球殻の内側表面に−Qが一様に分

布し,金属球殻の外側表面には+Qが一

様に分布する。金属球殻の内部には電荷

は現れない。

 

静電気と電流の違いは何だろうか。

 

 

1.1     コンデンサ

1.1.1      コンデンサーとは

同符号の電荷を集めようとしても、電荷同士が互いに反発するので、電荷を一カ所に集めることは難しい。しかし、例えば図のように導体同士を近づけておき、それぞれ正と負の電荷を与えると、電荷同士で引き合うため電荷を蓄えやすくなる。このような電荷を蓄えるための装置をコンデンサーという。

コンデンサーに電荷が蓄えられていない状態で図のように接続し、スイッチSを閉じると、電池が電位差Vを生じさせようとするので、正に帯電した極板と負に帯電した極板の間の電位差は電池が作る電位差Vと等しくなるまで電子の移動が生じる(←電流が流れるということ)。これをコンデンサーの充電という。

※導体中は電位が同じになって初めて電荷の移動が終わるので、電池が作る電位差と極板間の電位差が等しくなって初めて電荷の移動が終わる

一方、(電池を外した上で)充電したコンデンサーの両端に導体をつなぐと、(一続きの導体になるので)導体内の電位差が無くなるように電荷が移動し、導体内の電位差が無くなったところで電荷の移動は無くなる。このため、コンデンサーに蓄えられた電荷は無くなる。これをコンデンサーの放電という。

蓄えられる電荷の量Qは、電池の電位差Vに比例するはずである。比例定数をCと置き、式にすると と書くことができる。

この比例定数Cは極版の面積などといったコンデンサーの性質にもよるはずであり、これをコンデンサーの電気容量と呼ぶ。(電池の電圧が等しければ、コンデンサーの極板の面積が大きいほど、大きくなると考えられる。のちに詳しく学ぶ)

電位差が1Vのとき、1Cの電気量を蓄えることのできるコンデンサーの電気容量を1F(ファラッド)という。 

※つまり、電気容量の単位F(ファラッド)は から定義されるということ

 

図 コンデンサーの仕組み 日本電気技術者協会 https://jeea.or.jp/course/contents/01116/


コンデンサーに関する問題は後でまとめて扱う予定です。

 

 

1.1     (おまけ) 単位についてのまとめ

電磁気学の範囲に入り様々な物理量とその単位が出てきた。ここにまとめてみる。

 

  • 電気量(あだなQ:単位C(クーロン)

1 C は1 A の電流が1 s 間に運ぶ電気量の大きさとして定義する。

※電子と陽子1 個あたりの電気量の大きさeを電気素量といい,次のように表される 

e=1.60×10-19 C

問:クーロンの法則の比例定数 の単位はどのように表されるか?

 

  • 電場の強さ(あだなE:単位N/C、V/m

電場の強さは、その場所に置かれた+1Cの電荷が受ける力の大きさと等しいものと

定義する。

 

  • 電位、電位差(あだなV:単位V(ボルト)

1Cの電荷が1Jの位置エネルギーを得る電位差を1Vと定義する。

問:エネルギーの単位Jはどのように定義されていたか?

 

  • 電気容量(あだなC:単位F(ファラッド)

電位差が1Vのとき、1Cの電気量を蓄えることができるコンデンサーの電気容量を

1Fと定義する。

 

問:ここに上げられた単位の中で、最も基本的だと思われるものはどれですか?

 (ここで「基本的」とは、議論のベースとなるものという意味で用いています)