9.自己誘導と相互誘導
自己誘導とは、コイルに流れる電流を変化させたときに、そのコイル自身に誘導起電力が生じる現象のことです。これにより、コイルに流れる電流の大きさを急激に変化させようとしたとき(つまりコイルにかかる電圧を急激に変化させたとき)には、コイル内に生じる誘導起電力によって、上右図に示したようにコイルに流れる電流の変化が遅れます※。
一方、相互誘導とは、下図のようにコイルが近くに置かれている状況で、一方のコイルに流れる電流を急激に変えたときに、そのコイルが磁場を作り、その磁場によって他方のコイルに誘導起電力が生じる現象のことです。


※復習:コンデンサーにおいては、コンデンサーの両端にかかる電圧を急激に変化させようとしたときに、コンデンサーの両端の電圧の変化が遅れる。これは、電流が流れることによってコンデンサーに電荷が蓄えられ、両端の電位差が決まる($Q=CV$)ことから理解できる。

定式的な理解
1. 自己誘導
コイルを流れる電流が作る磁束は、そのコイル自身も貫いているので、電流の急激な変化はコイル内の磁束の急激な変化になる。磁束が急激に変化するときにコイルに生じる誘導起電力により、自己誘導は生じる。
このとき、誘導起電力は時間当たりの電流の変化に比例するはずであり、誘導起電力と時間当たりの電流の変化の比例定数を自己インダクタンスという。自己インダクタンスは$L$で表されることが多く、単位はH(ヘンリー)である。
この自己インダクタンス$L$の値は、(摩擦係数や反発係数などが理論的には求めにくいように、)実際に測定してみないとわからないような類のものである。電流の変化率が$\frac{\Delta I}{\Delta t}$ のときの誘導起電力$V$などから、自己インダクタンス$L$を測定すると考えておこう。
$V=-L \frac{\Delta I}{\Delta t}$
2. 相互誘導
例えば右図のような場合、コイル1を貫く磁束はコイル2も貫いている。コイル1の電流を急激に変化させると、コイル2内の磁束が急激に変化し、その結果コイル2内に誘導起電力が生じる。
このとき、コイル1に流れる電流の単位時間当たりの変化 $\frac{\Delta I_2}{\Delta t}$とコイル2内に生じる誘導起電力$V_2$ は比例するはずであり、それらの間の比例定数を相互インダクタンス$M$という。相互インダクタンスは$M$で表されることが多く、単位は自己誘導と同じH(ヘンリー)である。コイル間の距離やコイル内の誘電体の性質などにもよるため、これも実際に測定してみないとわからないような類のものである。
$V_2=-M \frac{\Delta I_2}{\Delta t}$
3. コイルに蓄えられるエネルギー
コイルに電流が流れているときにスイッチを切ると、右図のように少しの間電流が流れる。この際に流れた電流が持っていたエネルギーが、コイルに蓄えられていたエネルギーであると考えよう。
電流、電圧が一定の場合、電流のエネルギーは$W=IVt$とあらわされる。右図の場合、ある時間$\Delta t$秒間にながれる電流のエネルギーは$\Delta W = iV\Delta t=i \times L \Delta I / \Delta t \times \Delta t = Li \Delta i$である。
(積分すると∫$\Delta W=$∫$Li \Delta i$となるが、積分を避けるのであれば、無理やり)横軸を$I$、縦軸を$LI$とするグラフを描き(下図)、面積を求めると $U=1/2 LI^2$ が得られる。


$U=LI^2$
$U$〔J〕:コイルに蓄えられるエネルギー
$L$〔H〕:自己インダクタンス
$I$〔A〕:電流の大きさ
このエネルギーは,コイル内部の磁場に蓄えられていると考えることもできる。
※参照: コンデンサが蓄えるエネルギーは$U=\frac{1}{2}CV^2$
〔発展〕微分の形で式に表してみます
スイッチを入れた後のコイルを流れる電流の時間変化を考えると、空気中を落下する物体が終端速度に達するまでの速度時間($v-t$)グラフとよく似ていることに気が付く。なぜグラフが同じ形をしているのか、背後にある数理に着目して考えてみる。

終端速度になるときの$v-t$グラフを知っているとすると、解くべき式の比較をすることにより、$I-t$グラフの形を想像することができる。
さらに、$1/2 mv^2$が物体の運動エネルギーに対して、$1/2 LI^2$がコイルの持つエネルギーになる点もよく似ていることがわかる。
※ちなみに、コンデンサーの両端の電位差を表す$V-t$グラフも、上のグラフと同じ形をしており、コンデンサーに蓄えられるエネルギーは$U=1/2 CV^2$であった。興味がある人は考えてみましょう。